PMはparticulate matterの略であり、PM2.5は直径が2.5μm(マイクロメートル=千分の1ミリ)以下の超微小粒子をいう。原因となる物質としては、工場から出る煤煙や自動車の排気ガスなどのように物の燃焼などによって排出されるもの(人為起源)と、土壌や火山、黄砂など自然に由来するもの(自然起源)がある。家庭においても、喫煙や調理、ストーブなどから発生する。また、季節的なものとしては、例年、冬から春にかけて濃度が上昇する傾向が見られる(いわゆる春霞、図録4357参照)。 PM2.5は髪の毛の30分の1くらいの微小粒子のため、肺の奥深くまで入ってしまう。このため、喘息や気管支炎などの呼吸器系疾患への影響、肺がんリスクの上昇、不整脈など循環器系への影響などが懸念されている。 こうした影響を考慮したうえで、日本においては2009年に環境省がPM2.5の環境基準を定めた。これによると、PM2.5の場合「1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ、1日平均値が35μg/m3以下であること」と定められている。さらに、環境省が2013年に設置した専門家会合では、健康影響が出現する可能性が高くなると予測される濃度水準として、注意喚起のための暫定的な指針となる値を1日平均値70μg/m3と定めている。 図録4186には国別のPM2.5濃度とその推移についてふれたので参照。PM2.5の指標については同図録でさらにふれているので参照。 大気汚染の深刻な「赤丸」の地域の分布を見てみると、中国の北部地域とインド・パキスタン・バングラデシュのガンジス川沿いの地域に深刻な大気汚染が集中していることが分かる。 中国でも経済発展度が著しく、都市化も大きく進んでいる南部臨海部の都市地域は北部の都市地域と比較すると不思議なほど大気汚染の状況が軽くなっている。 中国北部から朝鮮半島を経て部分的には日本列島にかけての大気汚染には、中国北部内陸乾燥地域の黄砂、あるいは中国北部都市地域の汚染大気が偏西風にのって飛来する影響が否定できないように思われる。 中国北部やインド北部を除くと、大気汚染の深刻な「赤丸」の地域としては、中東湾岸部、あるいは西アフリカ地域で目立っている。 一方、都市化している割に大気汚染の軽度な「緑丸」の地域としては、北米、中南米、オセアニアの臨海部に近い都市地域、及び北ヨーロッパの都市地域が目立っている。もっとも、ニューヨーク州やカルフォルニア州などの大都市圏地域は除くが。 (2020年7月4日収録)
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