PMはparticulate matterの略であり、PM2.5は直径が2.5μm(マイクロメートル=千分の1ミリ)以下の超微小粒子をいう。原因となる物質としては、工場から出る煤煙や自動車の排気ガスなどのように物の燃焼などによって排出されるもの(人為起源)と、土壌や火山、黄砂など自然に由来するもの(自然起源)がある。家庭においても、喫煙や調理、ストーブなどから発生する。また、季節的なものとしては、例年、冬から春にかけて濃度が上昇する傾向が見られる(いわゆる春霞、図録4357参照)。 PM2.5は髪の毛の30分の1くらいの微小粒子のため、肺の奥深くまで入ってしまう。このため、喘息や気管支炎などの呼吸器系疾患への影響、肺がんリスクの上昇、不整脈など循環器系への影響などが懸念されている。 こうした影響を考慮したうえで、日本においては2009年に環境省がPM2.5の環境基準を定めた。これによると、PM2.5の場合「1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ、1日平均値が35μg/m3以下であること」と定められている。さらに、環境省が2013年に設置した専門家会合では、健康影響が出現する可能性が高くなると予測される濃度水準として、注意喚起のための暫定的な指針となる値を1日平均値70μg/m3と定めている(以上、日本医師会のWEBサイトによる)。 図では、WHOが人体の健康にとって危険だとしているPM2.5濃度が年間平均曝露(exposure)10μg/m3以上の地域に住んでいる2005年と17年の人口割合、及び17年について、環境省の環境基準である15μg/m3以上の人口割合を示した。 世界の各都市地域ごとの大気汚染の状況をマップとしてあらわした図録4187も参照。 2017年にOECD全体では人口の約3分の2の63%が10μg/m3以上の大気の下で暮らしている。 カナダ、エストニア、フィンランド、ニュージーランドではこの割合は1%未満、米国、スウェーデンは3%程度と良好な環境にあるが、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、イスラエル、韓国、メキシコ、オランダ、ポーランド、スロバキア、スロベニアでは、ほとんど全員が危険レベルの大気に曝されている。日本の値は80.6%であり、両グループの中間の位置にある。 より厳しい基準の15μg/m3以上の人口割合を見てみると、韓国、チリ、メキシコ、スロバキア、イスラエルなどはやはり8割以上の高い値を示している一方で、10μg/m3以上では人口比で80%を上回っていたドイツ、日本、フランスは10%程度とかなり低い。米国、英国はほとんどゼロに近い。 10μg/m3以上の基準で2005年と17年とを比較すると多くの国で改善が進んだことが分かる。改善幅が大きかったのはアイルランド、米国、ポルトガル、スイスであり、40%ポイント以上人口比が下がっている。日本も12%ポイントほど改善されている。一方、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、イスラエル、韓国、メキシコ、オランダ、ポーランド、スロバキア、スロベニアでは全く改善が進んでいない。 (2020年5月3日収録)
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