主に春先から5月ごろにかけて東アジア全域を襲う黄砂とは、我が国でも「春霞」などとして歌などにも詠まれている古来からの気象現象であり、中国内陸部のゴビ砂漠、タクラマカン砂漠、黄土高原から偏西風に乗って浮遊粒子が主に東へ飛来し、時には空が黄褐色に煙ることをいう。 気象庁の観測記録から毎年の観測日数(いずれかの気象官署で観測があった日数)をグラフにした。 これを見ると、毎年の変動が大きいが2000年以降は30日以上観測される年が多くなっており、黄砂飛来頻度が多くなっている印象である。 しかし、気象庁では「近年わが国で黄砂が観測されることが多いのですが、黄砂は年々変動が大きく、長期的な傾向は明瞭ではありません。」(平成21年3月更新の診断)としており、黄砂飛来の増加傾向については慎重な態度である。実際、2011年以降はふたたび観測日数が減少している。 中国の過放牧や砂漠化と結びつけて黄砂飛来の増加が論じられることが多い。例えば「黄砂の頻発は。急速に広がる牧養力を越えた放牧や農地転換による土地の劣化、砂漠化がよういんといわれる。...今年は50年ぶりともいわれる大干ばつが、中国北部を直撃。お隣の韓国では黄砂被害が例年より深刻化するとの予報から、空気清浄機メーカーなどの黄砂関連株が急上昇しているという。日本もどれほどの規模になるのか、気になるところだ。」(東京新聞2009.3.15「知り得ランキング」) しかし、そう単純な因果関係ではないようだ。気象庁のレポートはこう報じている。 「国内に発生域を抱える中国やモンゴルでは、降塵現象としての黄砂現象より、むしろ黄砂現象の原因となる砂塵嵐(ダストストーム)による自然災害が深刻である。...1960 年から2003 年の中国国内の気象台338 か所の地上気象観測記録によれば、黄砂現象の主たる発生域である中国のダストストーム発生頻度は、1980 年代後半から明瞭な減少傾向を示している。一方、韓国ソウル市での観測記録(1915 〜2002 年)によると、黄砂現象の観測日数は、1980 年代から増加傾向を示している。また、気象庁の黄砂現象観測延べ日数は、2000 年から2002 年にかけて、1971年以降で最多を記録しているが、年々変動が大きく、長期的な傾向は明瞭でない。このように、黄砂の主たる発生域の中国と、風下の韓国および日本の黄砂現象観測回数の対応は必ずしもよいとはいえない。」(気象庁「異常気象レポート2005」(3.2黄砂)) すなわち黄砂が増加しているとしても発生源の拡大と言うより、地球レベルの大気循環の変動によるところが大きいと言うわけである。 第2の図に月平均の黄砂観測日数のグラフを付けておいたが、これを見ると秋から黄砂飛来がはじまり、3〜4月にピークを迎えるという季節的な現象であることが分かる。 (2009年3月18日収録、2010年3月23日更新、2011年4月11日更新、2016年5月7日更新、2018年5月1日更新、2021年3月30日59地点ベースから11地点ベースへ変更して更新、2023年4月12日更新、2024年4月3日更新)
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