絶滅した種類を含めて、大陸毎に、どれだけの数(属ベース)の大型動物(メガファウナ)がいたかをグラフにしてみると、実は、南米が58種類でアフリカの49種類を上回っている。北米も45種類とそれに次いで多く、面積の小さなヨーロッパ、オーストラリアはそれぞれ24種類、22種類と少ない(下表参照)。
ところが、北米、南米、オーストラリアでは絶滅した大型動物が多く、その結果、生存している大型動物が激減してしまい、絶滅の少なかったアフリカが結果として野生動物の宝庫になっているというわけだ(アフリカ・サバンナの代表的な大型哺乳類については図録4176参照)。 絶滅した大型動物としては、マンモスが有名であるが、オーストラリア・ニューギニアには、巨大カンガルー、ディプドロトン(牛程度の大きさのサイに似た有袋類)、肉食性の有袋類、飛べない大型鳥、巨大トカゲ、巨大ニシキヘビ、陸生のワニがいたという(ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」(1997)草思社)。また、アメリカ西部には、ゾウ、馬、ライオン、チータ、ラクダ、地上性オオナマケモノ、高山ヤギなどがいたという(同上)。
基準を44s超ではなく、1トン超にすると、アフリカとアジア以外では、すべての大型動物が絶滅したという(S.Wroe他(2004)による。以下同様)。
何故こうした絶滅が起こったかについては、人類活動が主要要因であるという説が以前より支配的であるが、そのなかでも、30年前の「過剰殺戮(overkill)」説から、近年は、「電撃戦(blitzkrieg)」説が主流になっているらしい。 この「電撃戦」説は、人類の捕食効率が、人類の発祥地であるアフリカより、人類が遅く進出したオーストラリアやアメリカ大陸で高まり、その結果、大型動物の絶滅比率も高まった点に着目した説であり、「捕食の技術進歩という点だけでなく、人類の捕食に対して新しく対象となった大型動物ほどウブだった(適応していなかった)点」(S.Wroe他(2004))を強調している。 人類はアフリカ大陸で発祥し、長い時間をかけて、他の大陸に拡散していった(参考図参照)。その間に、アフリカでは、人類の進化と共存する形で野生動物も進化していった(人類から身を守るすべを発達させていった)のに対して、捕食技術(狩りの技術)が進歩した人類と新しく遭遇したオーストラリアやアメリカ大陸の野生大型動物は、共存するすべを発達させる間もなく、人類に対してあっさりと絶滅させられてしまったというわけである。 「アフリカおよびユーラシアでは、絶滅はそれほど広汎ではなく、同時的でもなかったが、それぞれ2属と7属を失った。これらの大陸では、人間と動物がいっしょに進化したことが指摘されていて、したがって、人間が危険な存在になっていくのにつれて、動物たちはより用心深くなっていったのではないかといわれている。ほかの大陸では、イヌをつれた「完全武装の」人間達が無警戒な動物と出会った。これらの動物たちは、自分よりはるかに小さな哺乳類がつきつける危険を認識しなかったのである。」(リチャード・サウスウッド「生命進化の物語」原著2001) 人類の影響は大型動物(メガファウナ)に止まらない。現時点では、野生哺乳類全体よりヒトの方がバイオマス量で上回る至っている状況については図録4165参照。 (2006年8月7日収録、2007年3月23日サウスウッド(2001)からデータ・引用追加)
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