陸・海・深部地下別のバイオマス分布(単位:GtC)
陸上 深部地下
植物(plants) 450 450
古細菌(archaea) 7 0.5 0.3 陸4、海3
ウイルス(viruses) 0.2
細菌(bacteria) 70 7 1.3 陸60、海7
原生生物(protists) 4 1.6 2
菌類(キノコ類)(fungi) 12 12 0.3
動物(animals)計 2
軟体動物(molluscs) 0.2 0.2
節足動物(arthropods) 1 0.2 1
刺胞動物(cnidarians) 0.1 0.1
線形動物(nematodes) 0.02 0.006 0.01
環形動物(annelids) 0.2 0.2
野生鳥類(wild birds) 0.002 0.002
魚類(fish) 0.7 0.7
野生哺乳類(wild mammals) 0.007 0.007
家畜(livestock) 0.1 0.1
ヒト(humans) 0.06 0.06
550 470 6 70
(資料)Yinon M. Bar-On, Rob Phillips, and Ron Miloa(2018), The biomass distribution on Earth, appendix


 イスラエルのワイツマン科学研究所の研究者Bar-Onらが、2018年5月に、地球上の生命体(バイオマス)の炭素量に関する包括的な推計を発表した。その結果概要を図録として収録した。データは2桁以下で丸めた数字なので合計が必ずしも一致しない。

 バイオマスの炭素総量は550ギガトン(5,500億トン)である。そのうち、最大なのは植物であり、450ギガトンと82%を占めている。次に多いのは細菌(バクテリア)であり、70ギガトンと13%を占めている。

 これほど多い細菌のバイオマスは、少しイメージしにくいが、ほとんど(67ギガトン)が陸海の深部地下に賦存しているようだ(表参照)。

 動物のバイオマス量は全部あわせても2ギガトンと0.4%に過ぎない。ヒトに至っては0.06ギガトン(0.01%)とさらに少ない。

 動物の中で最も多いのは節足動物であり、動物の約半数を占めている。もっともすぐ連想しがちな昆虫(注)は余り多くなく、海中のエビ類(シュリンプ)がほとんどを占めているらしい。

(注)昆虫の中ではアリ類の占める割合が大きい。「アリ類については、現在地球上に少なく見積もっても2京匹がいると推計され、炭素量に換算すると1200万トンにのぼる。これは野生の哺乳類と鳥類を合わせた質量を上回っており、ヒトの約20パーセントにも相当する。(中略)一方、シロアリは世界で約3000種が知られ、枯死植物を食べることで地球の物質循環に大きく貢献している。熱帯を中心に世界に24京匹が生息しているとされ、シロアリとその巣から排出される二酸化炭素およびメタンガスは全地球の排出量の2〜5パーセントに相当すると推計されている」(砂村栄力「世界を支配するアリの生存戦略」文春新書、2024年)。

 動物の中で節足動物に近い量を占めているのが魚類であり、脊椎動物の中では他を断然凌駕している。

 脊椎動物の中の鳥類・哺乳類については、現在では、家畜が最も多く、ヒトが何とこれに次いでおり、この両者が野生鳥類や野生哺乳類を大きく上回っているのが印象的である。

 ヒト(人類)の影響で、野生動物のバイオマスは大きく減少し、これに代わって、ヒトと家畜のバイオマスが大きく増加したのである。下図がそうした変化を端的にあらわしている。人類が大型哺乳類を絶滅に追い込んでいった経緯は図録4170参照。


 Bar-Onらの研究を紹介している英エコノミスト誌によれば、ヒトの躍進の影響で、「野生哺乳類は6分の1にまで縮小した。その間、家禽類は野生鳥類のすべての種類をあわせた量の3倍に膨れ上がっている。ヒトと家畜は魚類を除く惑星上の他のすべての脊椎動物を圧倒するに至っている。しかし、魚類もヒトの影響から免れているわけではない。魚類のバイオマスは人類登場以降に1億トン前後減少したと考えられているのである。また、植物の優勢は、今でも圧倒的であるとはいえ、人類文明以前には、もっと大きかった。Bar-On博士によれば、植物の全バイオマスは以前のレベルのちょうど半分にまで落ちているのである」(The Economist May 26th 2018)。

(2018年7月22日収録、2024年9月25日アリ類、シロアリのバイオマス)


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