世界的に天然ガスの需要が増加している。日本の需要も拡大しているが、2004年の一次エネルギー供給量に占める天然ガスの割合は米国22%、EU15カ国24%に対して日本は13%となお約半分に過ぎない(経済産業省「エネルギー白書2007」)(図録40004050参照)。

 ここでは、天然ガス、及びLNG(液化天然ガス)の貿易・輸出入の状況を図示した。

 天然ガスは生産量の26%が輸出に回されている。石油の生産量の62%が輸出に回されているのと比べると小さい。天然ガスの貿易のうちパイプラインにより取り引きされた量は74%、LNGによる取引は26%である(2005年、エネルギー白書2007)。

 主な輸入市場は、米国、EU、及び日韓、台湾などの東アジアの3地域である。輸入国の上位5位は、米国、ドイツ、日本、イタリア、ウクライナとなっている。

 パイプライン貿易の主な輸出国は、ロシアを筆頭にカナダ、ノルウェイと続いており、輸入国は米国、ドイツ、イタリア、ウクライナ、フランスなどである。

 LNG貿易はアジア向けを中心として発達し、日本を筆頭に韓国、台湾が大きなシェアを占めている。輸出国はインドネシア、マレーシア、オーストラリアなどアジア太平洋地域が中心であるが、カタールなど中東からの輸出も増加している。この他、アルジェリア、ナイジェリアなどアフリカからイタリア、フランス、スペインへの輸出、トリニダードトバゴから米国への輸出もある。米国では天然ガス需要の伸びに対して、国内生産やカナダからのパイプライン輸入の伸びが追いつかないため、LNG輸入が拡大している。

 日本におけるLNG輸送とガスパイプライン構想については図録4050参照。

 参考のため以下にエネルギー白書2007から「LNG輸送について」と「LNG市場の拡大」という2つのコラムを引用する。

LNGの輸送について

 我が国では、産ガス国からの距離が遠く、現在のところ産ガス国とはパイプラインで連結されていません。これは、天然ガスは熱量当たりの体積が非常に大きく、気体のままパイプラインで長距離輸送するのは経済的ではないことがあります。そこでガス輸出国で、天然ガスを−162度に冷却して液化することによって体積を小さくし(約1/600)、専用船で我が国へ輸送するという方法が取られています。我が国に到着したLNGは、受入基地で再気化されて発電用や民生用、産業用に使用されます。

LNG市場の拡大

 2006年現在で、カタールの年間LNG生産能力は、約2,500万トンでした。これは既に世界第二位の量ですが、近年大幅な拡張計画を打ち出しています。全ての新規プロジェクトが予定通り立ち上がれば、2010年頃には年間生産能力が約7,700万トンに達する予定です。現在、カタール産のLNGはほとんどがアジア向けに供給されていますが、拡張分のほとんどが欧米に向けられる見込みです。これによって、カタールが圧倒的供給力を持つLNG輸出国として台頭してくるとともに、中東から欧米向けの大きなLNGフローが生じることになります。

 一方、アジア・太平洋地域に目を転じると、ロシア(サハリン)、オーストラリア、インドネシアが北米西海岸にLNGを供給する契約を締結しています。これらの契約の供給が開始されると、太平洋を横断する新たなLNGフローが出現します。このような、アジア、北米、欧州の市場を結ぶ新たなフローの出現は、需給面だけでなく、LNG取引内容や価格面等でも異なる市場間での相互作用を促す結果、LNG市場がグローバル化する方向に一歩近づくことが見込まれています。

 LNGの輸出入の状況は以下の表を参照。

LNGの輸出入(2004年) 単位:Billion Cubic Feet、%
輸入国 輸出国 輸入量 構成比
米国 トリニダードトバゴ 462 70.9
アルジェリア 120 18.4
その他 70 10.7
日本 インドネシア 769 26.8
マレーシア 650 22.6
オーストラリア 426 14.8
カタール 334 11.6
ブルネイ 314 10.9
アラブ首長国連合 252 8.8
その他 129 4.5
イタリア ナイジェリア 155 72.1
その他 60 27.9
フランス アルジェリア 237 88.1
その他 32 10.2
韓国 カタール 281 26.8
インドネシア 258 24.6
マレーシア 214 20.4
オマーン 212 20.2
その他 84 8.0
スペイン アルジェリア 232 37.5
ナイジェリア 170 27.5
カタール 138 22.3
その他 78 12.6
台湾 インドネシア 193 58.0
マレーシア 131 39.3
その他 9 2.7
(資料)米国Energy Information Administration(Webサイト)

(2007年11月26日更新)


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