エネルギー資源を輸入に依存している我が国では過去の2回の石油ショックへの積極的な対応もあって省エネの取り組みが他国に比べ進んでいる。

 特に産業の中でもエネルギー消費規模の大きな鉄鋼、セメント等の素材産業では省エネルギー型の生産技術が発達しており、世界でも最高水準のエネルギー効率を誇っている。

 図録は主要な素材の生産に使うエネルギーが日本を100とした場合に他国ではどれだけ必要かを指数で比較したものである。

 例えば最も基本的な素材として鉄鋼をあげると鉄1トンを生産するのに韓国では日本の5%増し、中国や米国では日本の2割増しのエネルギーを必要としている。

 セメントや紙、あるいは電力ではさらに鉄鋼にも増してエネルギー効率が日本の場合高い。石油製品の場合は米国・カナダよりは高いがアジア先進国や西欧と比較するとほぼ同等である。

 近年の石油価格の上昇は、1トンの素材を増産するのに必要なエネルギー必要量がこのエネルギー効率と平行していることから、日本の素材産業の国際競争力(あるいは日本の素材を使用した組立産業の競争力)を上昇させていると考えられる。近年の自動車や鉄鋼の好調の一因はこうした点にあると考えられる(図録4750、図録4800参照)。

 なお、主要国の対GDPのエネルギー効率とその推移については、図録4070参照。

 人間開発報告書2007/2008(2007年11月公表)は「気候変動との戦い-分断された世界で試される人類の団結」を特集しているが、そこでも以下のような同様のデータが掲げられている。


 エネルギー白書での素材産業のエネルギー効率の国際比較データの位置づけについては、日本の素材産業の世界最高水準の環境パフォーマンスさを提示することによって、地球温暖化対策における産業分野の自主行動の有効性を示し、炭素発生量に比例した税を課す環境税による一律の温暖化ガス発生抑制を回避しようとする含意がある。またすでに極限まで取り組みを進めているので同時にこれ以上の発生抑制は困難である点も同時に示す意味がある。

 人間開発報告書における素材産業のエネルギー効率の国際比較には、こうした目的はない。米国のようなエネルギー多消費国やこれから消費量が大きく増大すると見られる中国やインドにはエネルギー効率の技術的な改善余地が大いにある点を示すことにより、世界全体や途上国において希望をもって地球温暖化対策に取り組む必要性を主張しているのである。

 なお、エネルギー白書と人間開発報告書とで中国の鉄鋼産業のエネルギー効率がそれぞれ120と150と大きく異なるが前者が一貫製鉄所が対象であり(中国でも大規模製鉄所で比べるとさらに110と差は縮まる)、後者が屑鉄を使用する電炉製鉄所等を含んだ比較であるからだと思われる。

(2008年1月4日収録)


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