全国に神社は約8万社(81,166社)あるが信仰の対象は記紀神話などに登場する万物創造の関わる神の他、食物に関する神、七福神など中国・インド系の神、あるいは死後に祭られた人(英雄系として日光東照宮の徳川家康、明治神宮の明治天皇、怨霊系として太宰府天満宮の菅原道真、神田明神の平将門)と多種多様である。

 全国に20社以上の神社がある信仰の合計は約5万社であり、そのうち全国に分布している八幡信仰が7,817社と15.9%を占め、最も多い。第2位の伊勢信仰は東日本に多いが中部地域にも浸透している。第3位の天神信仰は西日本で目立っている。

 都道府県別には新潟県の神社数が最も多く、兵庫県、福岡県がこれに続いている。最も少ないのは沖縄県であり、和歌山県がこれに次いでいる。

 全国の神社の多くは宗教法人である神社本庁に属しているが、宮司人事等の問題で神社本庁の支配から離れる神社もある(下表参照)。「離脱すると、本庁の定める神職資格などが失われるが、既に離脱した梨木神社(京都市)の多田隆男宮司(66)は「困ることは何もない。むしろ本庁への負担金の納付義務がなくなり助かった」。気多大社(石川県)の三井孝秀権宮司(55)も「本庁の束縛を受けず、時代にあった宗教活動ができるようになった」と話す」(東京新聞2017年9月25日)。

神社本庁を離脱した有力神社
単立した年 神社名 離脱前の社格(旧社格) 所在地
1985年 日光東照宮 別表(別格官幣社) 栃木県
2004年(10
年に復帰)
明治神宮 別表(官幣大社) 東京都
2010年 気多大社 別表(国幣大社) 石川県
2013年 梨木神社 別表(別格官幣社) 京都府
2017年
(予定)
富岡八幡宮 別表/東京十社(府社/准勅祭社) 東京都
(注)戦後、神社の国家管理は廃止され、神社本庁に属する全ての神社は対等の立場であるとされた(伊勢神宮を除く)。しかし、旧の官国幣社や一部の規模の大きな神社については、神職の進退等の人事に関して一般神社とは異なり神社本庁によって特別な扱いを受けており、その対象となる神社は、「役職員進退に関する規程」の別表に記載されていることから、「別表神社」と呼ばれる。なお、靖国神社(東京都)や伏見稲荷大社(京都市)は当初から単立の宗教法人
(資料)ダイヤモンド・オンライン(2017.7.5)

神社本庁の包括関係から離脱した主な神社
単立した年 神社名 所在地
1986年 日光東照宮 栃木県
2002年 京都霊山護国神社 京都府
2005年 気多大社 石川県
2013年 梨木神社 京都府
2017年 富岡八幡宮 東京都
2019年 建勲神社 京都府
2020年 金刀比羅宮 香川県
(注)気多大社は2010年に最高裁で勝訴して離脱が確定
 明治神宮(東京都)は2004年に離脱したが、10年に復帰
(資料)東京新聞(2020.11.18)

 東京新聞(2020.11.18)によれば、、「こんぴらさん」の愛称で知られる香川県琴平町の金刀比羅宮は11月17日、「神社本庁(東京都渋谷区)から離脱したと発表した。離脱の理由は、昨年11月の天皇陛下の即位関連儀式「大嘗祭」を地元で祝う「大嘗祭当日祭」を巡り、本庁が約束していた供え物「弊帛料」(5000円)が届かなかったためという。

 同宮は大正天皇の大嘗祭で創作された歌舞を宮内省の楽師から指導してもらい、約100年前から「讃岐風俗舞」として継承し、当日祭でも披露した。皇室との特別な縁を誇りとするだけに、本庁の対応を「天皇陛下に対しても不敬極まりない行為」と批判していた。

 同宮は2月に離脱方針を決めて法的手続きに入り、10月20日に文部科学相から離脱が認証されていた。今後は単一の宗教法人として宮司交代などを判断できる。幣帛料は今年1月末、本庁の地方機関の香川県神社庁から現金書留で送られてきたという」。

 背後にどういう対立があったかは不明であるが、奇妙な話である。

 以下に各神社信仰についてあらましをまとめた。

神社信仰の解説
信仰種類 主な性格・神徳 主な神社 総本宮・中心神社 祭神 分布 説明
八幡信仰 武家や寺院の守護神 八幡神社、若宮神社など 宇佐神宮(大分県宇佐市)、鶴岡八幡宮 応神天皇、比売大神、神功皇后 全国的に分布 荘園制により著名寺院の領が広がり、鎮守神として全国に勧請されていった。源氏の氏神。
伊勢信仰 国家鎮護の最高神、皇室の租神 神明社、皇大神社、伊勢神宮など 伊勢神宮(三重県伊勢市) 天照大神、豊受大御神 東日本に多い 広めるために参詣者の案内などをする御師が置かれ、民衆に普及。江戸時代「おかげ参り」が盛んになった。
天神信仰 雷雨の神、学問や和歌などの神様 天満神社、北野神社、天神神社など 太宰府天満宮(福岡県太宰府市)、北野天満宮(京都市) 菅原道真) 九州・沖縄に多い 悲運のうちに没した道真公を慰霊。
稲荷信仰 穀物の神、諸産業の神 稲荷神社、宇賀神社、稲荷社など 伏見稲荷大社(京都市) 宇迦之御魂神 東日本に多い 神の使い(神使)の狐でなじみ深い。元は渡来人の秦氏の私祠とされる。東寺の鎮守となったことや農村の民俗信仰と結び付き、広がった。
熊野信仰 農林水産の神、良縁 熊野神社、王子神社、十二所神社、若一王子神社など 熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社(和歌山県) 家津御子大神、熊野速玉大神、熊野夫須美大神 北海道、東北に多い 神道、仏教、民間信仰、修験道などを習合した信仰。参詣者の案内をする御師らが活躍し普及。
諏訪信仰 狩猟神、軍神、風神・水神 諏訪大社、諏訪社、南方神社など 諏訪大社(長野県諏訪市) 建御名方神、八坂刀売神 北陸、中部に多い 現在でも御狩神事が行われている。武士層にも信仰があつかった。
祇園信仰 疫病除け 八坂神社、須賀神社、八雲神社、津島神社、須佐神社など 八坂神社(京都)、津島神社(愛知県津島市) 牛頭(ごず)天王 関東に多い 祭神は須佐之男命と同体とされる。祇園祭は、厄災を起こす御霊を鎮める儀礼「御霊会」が起源。
白山信仰 水の神、農耕の神、縁結び 白山神社、白山社、白山比盗_社、白山姫神社など 白山比刀iひめ)神社(石川県白山市) 菊理媛神 北陸、中部に多い 白山を対象とする山岳信仰
春日信仰 雷神・竜神、藤原氏の氏神   春日大社(奈良市) 建御雷神、経津主神、天児屋命、比売神   藤原氏の氏寺・興福寺とのかかわりも深く、広大な所領を背景に信仰が広まった。
三島・
大山祇信仰
山の神、海上守護   三嶋大社(静岡県三島市)、大山祇(おおやまづみ)神社(愛媛県今治市) 大山津見神   武家にあつく信仰された一方、農耕に関する神事も行われ、農耕神の一面もある。
鹿島信仰 武神、水の神   鹿島神宮(茨城県鹿嶋市) 建御雷神   建御雷神(たけみかづち)は天孫降臨に先立ち国土を平定した神。武運を祈る武将らの崇敬を集めた。
金比羅信仰 海上安全、雨祈願   金刀比羅宮(香川県琴平町) 大物主神   インドのガンジス川のワニを神格化した仏教の神に起源をもつ。
(資料)東京新聞大図解2007.12.2

(2007年12月10日収録、2017年7月5日神社本庁から離脱した有力神社の表、9月25日補訂、2020年11月18日金刀比羅宮離脱)


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