指標としては2種類をグラフで表示している。すなわち「多文化・多言語環境での授業」の研修参加率と「異文化・外国人との意思疎通」の研修参加率である。 「多文化・多言語環境での授業」の研修参加率が最も高いのはニュージーランドであり、米国、カナダ・アルバート州がこれに次いでいる。この3カ国では参加率が40%を越えている。アングロサクソン系の国で多文化対応が進んでいるといえよう(ただし英国は例外)。 同参加率が最も低いのはフランスの6.3%であり、これに次いで低いのはオランダ、日本、ベルギーの順になっている。日本はそもそも外国人生徒が多くないので低いのは分かるが、外国人生徒がかなり多いと思われるフランス、オランダなど低いには少し意外である。外国人の自国文化への適応を当然と考えているためだろうか。あるいは自国語の他、研修するまでもない英語でも教えられれば、それでよしと考えているのかもしれない。 フランスはそもそも専門研修そのものへの参加率が低いからという側面もあろうが、オランダは専門研修参加率はほとんど100%なのでそうとは言えない。 「異文化・外国人との意思疎通」の研修参加率が最も高いのはイタリアの32.6%であり、ラトビア、ニュージーランドがこれに次いでいる。 こうしたダイバーシティ研修についての参加率と要望率とは必ずしも比例していない。報告書は次のように述べている。「例えば、オランダは、多文化・多言語環境での授業の研修についての要望率(5%以下)も参加率(10%以下)も低い。これは、教師たちが多文化環境において教育を行う準備が十分できていると感じているからであろう。OECDの中でダイバーシテ研修への参加率の高い3か国(カナダ・アルバータ州、ニュージーランド、米国)については、それを要望している割合は10%以下と低い。こうした国・地域では、ダイバーシティ研修への参加が多様性にあふれたクラスで働く準備を用意しているので、要望率は低くなっているのだと説明できよう。最後に、ブラジルやコロンビアといった国では、多文化・多言語環境での授業についての研修の要望率(43%以上)も参加率(26%)も高い。こうした国の教師たちはこうしたテーマの研修の後でも更なる取り組みを期待しているといえよう」(OECD Education at a Glance 2021, p.35)。 なお、この指標はSDG指標の一部としても注目される(SDG指標4.c.7「過去12カ月の間にOJT訓練を受けた教師の比率」)。 対象国は、図の順に、ニュージーランド、米国、カナダ・アルバータ州、スペイン、韓国、コロンビア、ラトビア、イタリア、トルコ、ブラジル、エストニア、ロシア、スウェーデン、アイスランド、オーストラリア、チリ、イスラエル、フィンランド、英国、リトアニア、オーストリア、スロベニア、メキシコ、ノルウェー、ハンガリー、デンマーク、スロバキア、チェコ、ポルトガル、ベルギー、日本、オランダ、フランスの34か国である。 (2022年1月21日収録)
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