年功賃金、終身雇用、企業別組合は、日本型経営の三大特徴と言われた。それぞれ、1時期ほどの普及度を示していないとされるが、ここでは終身雇用の状況をOECD報告書のデータで概観してみよう。

 データは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査における標準労働者の集計にもとづいている。ここで「標準労働者」とは、「学校卒業後直ちに企業に就職し、同一企業に継続勤務している労働者」をいう。標準労働者という用語は終身雇用が「標準」と思われていた一時期の日本でだけで通用するものであり、OECD報告書でも標準労働者という言い方はしていない。ここでは学卒後継続雇用者と呼んでおこう。

 図には、学卒後継続して雇用されている者の全雇用者に占める割合を掲げたが、推移をあらわしたA図では企業規模別、年齢別の2重クロス集計、現況をあらわしたB図では、さらにセクター別を加えた3重クロス集計で示されている。

 「終身雇用」という用語はやや極端なケースを指す表現なので、近年は「長期継続雇用」とも呼ばれることが多いが、OECDの報告書では、A図の表題は「終身雇用(Lifetime employment)は多くの年齢階層で10年前ほど一般的ではなくなっている」、B図の表題は「終身雇用は製造業だけでなく大企業で一般的だ」とされている。

 終身雇用の本来の意味は新卒採用の後、離職するまで同じ企業で働くということなので、まずA図で、離職年齢に近い50代の学卒後継続雇用者の比率を見てみよう。

 2016年の値を見ると、大企業、中企業、小企業が、それぞれ、39%、21%、7%となっており、大企業では4割近くなのに対して小企業では1割未満と企業規模による差が大きい

 次に、年齢別の違いに着目しよう。

 終身雇用制度が安定的に推移しているとすれば、年齢別の値は若い方から中高年にかけてだんだんと下がっていくはずである。大企業以外では年齢が高くなると低下する傾向が認められる。ところが大企業では、30代より40代、40代より50代の方が継続雇用者率が高まっている。

 こうした逆転現象には、2つの可能性があろう。1つは、かつて一般的だった大企業の終身雇用制度が崩れつつあり、若い世代で継続雇用率が下がってきているためである。もう1つは、大企業でも終身雇用はそんなに以前からの雇用慣行ではなく(図録3800)、21世紀になってやっと中高年の雇用にまで影響が及ぶようになったためである。

 そこで大企業の年齢別の値の推移を見ると、2006年の段階では年齢別にだんだんと下がるパターンとなっており(本サイトで独自集計した2001年値ではさらにこの点が顕著)、2016年にかけて、20代以下と50代はほぼ変化がないのに対して、30代、40代では大きく値を下げている。つまり、前者の理由が成り立っているといえる。ただし、50代だけ比較すると、むしろ、37%から39%へと値が上昇しており、後者の側面も認められる。

 大企業ほど明確ではないが、30代、40代で継続雇用率が低下している点などに中小企業にもこうした動きと共通する面がある。

 終身雇用は製造業の大企業で一般的とされていたので、本当にそうなのかを確かめるために第2図にはセンター別の集計結果を掲げた。

 50代の値を見ると、製造業の大企業、中企業、小企業が、それぞれ、46%、26%、8%となっており、大企業では5割近くなのに対して小企業では1割未満と特に製造業で大企業の終身雇用と企業規模による大きな差が目立っている。非製造業の場合は、それぞれの規模で、製造業より割合が低くなっている。終身雇用は非製造業では製造業ほどは一般化していないことが分かる。

 上述のように、年齢別には、大企業では、製造業、非製造業を問わず、30代より40代、40代より50代の方が継続雇用者率が高まるという逆転現象が見られるが、特に製造業でこの傾向が顕著である。これは製造業ならではの終身雇用制が衰え、製造業と非製造業とで差異が縮小しているためであろう。

 A図に見られる時系列変化には、産業構造が製造業から非製造業にシフトしている影響も含まれていることを忘れるべきではなかろう。

 学歴、男女別に学卒後継続雇用率を下図で示したが、高学歴ほど終身雇用が多く、また男性の方が女性より終身雇用が多いことが分かる。ただし、大卒女性の場合は、30代以下では、大卒男子より継続雇用率が高く、この点だけは例外となっている。高学歴化が進んでいる点では終身雇用が維持される方向にあるが、女性雇用が多くなっている点では、逆に、終身雇用が衰退する方向にあるといえる。


(2019年5月5日収録、5月6日学歴・男女別)


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