ここでは、あくまで長期継続雇用の状態にあった労働者の賃金上昇率を比べているに過ぎず、そうした状態にある労働者がどのぐらいの割合で存在しているかを示している訳ではない。つまり、日本では「終身雇用」とも呼ばれていた長期継続雇用における「年功賃金」の程度、すなわち賃金カーブの傾斜度を示しているに過ぎない。 具体的には、中高年の50歳代の労働者の勤続年数が10年から20年に10年間伸びた場合の賃金上昇率を示している。データが古い賃金カーブの各国比較は図録3330参照。また、日本における入社から60歳で位までの継続雇用者の賃金カーブとその変化については図録3340参照。 日本の場合は11.1%の伸びと韓国、トルコに次いで高い上昇率となっており、年功賃金の程度はOECD諸国の中でも著しいことが分かる。上記の日本の賃金カーブ・データによれば、年功賃金の程度は日本の場合もかなり低まってきているが、それでもOECDの中ではなお、高い程度となっているのである。 ただし、ドイツやギリシャも10%台であり、また、米国も9.6%と長期継続雇用の場合の賃金上昇率は決して低くはない。OECD諸国の平均でも5.9%となっている。OECDの報告書がこのデータを「多くのOECD諸国で年功賃金はなお支配的」(Seniority wages remain dominant in many OECD countries)と題しているのもうなずける。 一方、中高年になっても継続雇用によって賃金があまり伸びない国は、スロバキア、エストニアといった国と並んで、スウェーデン、デンマークといった鉾OU諸国で目立っている。こうした国でも中高年の継続雇用の場合の10年間の賃金の伸びは2%未満なのである。言い換えれば中高年になって大きく賃金が伸びるのではなく、若い頃から賃金はある程度高いのだと言えよう。 国によって異なる労働事情の1断面をかなり鮮やかに示しているデータと考えられる。 (2020年6月1日収録)
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