各国のホームレスの人数は、原資料のOECDデータベースでは、「路上ないし公有地で暮らす人数」のほかに「ホームレスの収容施設・避難所(シェルター)で暮らす人数」を含めてカウントされている。

 後者について日本では、公営及び民間委託で「緊急一時宿泊事業(シェルター) 」や社会復帰を促す「自立支援事業」が実施され、そのための施設が設けられているが(図録2970参照)、収容人数についての公的統計はないようだ。

 このため、日本のデータは「路上ないし公有地で暮らす人数」のみなので、ここでは、この人数が判明する各国で比較したグラフを掲げた。ここで公有地(public spaces)とは、公園、道路、河川敷などである。

 比較は人口比で行われている。日本のホームレス人数は厚生労働省の調査で2023年に3,065人とされており(図録2970)、OECDへの報告もこれをベースにしていると考えられるので、人口10万人当たりに換算して2.5人とされている。

 比較対象の16か国中、日本の人数はノルウェーに次いで少なく、米国の75.5人の30分の1となっている。日本はホームレスの少ない国と言ってよかろう。もっとも20年前の2003年には2万3千人と多く、今の英国、カナダ並みだった。

 なお、各国で「ホームレスの収容施設・避難所(シェルター)で暮らす人数」は多く、人口10万人当たり、英国では410人、フランスで299人、ドイツで213人、米国で117人、ノルウェーで25人と「路上ないし公有地で暮らす人数」を大きく上回っている。

 図録2970で見たように日本のホームレス人数は減少傾向にある。各国ではどうかというデータを下に示した。こちらの数字は基本的にシェルター収容中の人数も含んでいるが、ホームレス人数の増減を反映していると考えられる。

 各国推移についてイングランドのように増加傾向にある国もあれば、日本と同様、フィンランドのように減少傾向にある国もある。オランダは増加傾向にあったが、近年は減少に転じている。米国は減少傾向にあったが、コロナ禍以降再度増加に転じている点が目立っている。


 ダイヤモンド・オンラインの2023年8月の記事によれば、人口3.3億人の米国では新型コロナウイルス禍が下火になる中、今年はホームレスが記録的な勢いで増えており、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、都市や州など地域のホームレス人口を集計する300超の団体のデータを基にまとめたデータでは、2023年のこれまでのホームレス人口は前年同期比約11%増の少なくとも57.7万人であることが明らかになったという。人口比では0.2%と日本を圧倒している。

 人口2,200万人のオーストラリアでは、「豪州政府統計局によると、最新の11年調査でホームレスとされたのは10万5237人。9万人未満だった06年の約1.2倍に増えた」(朝日新聞2014.8.28)とされるが、これと比較すると非常に少ない。(もっとも、オーストラリアのホームレスの定義は、最低限の住宅居住水準に達しない者とされ、一部屋に何人もで暮らしている者や他人の居宅に一時居候している者なども含んでいる。オーストラリアのセンサス報告書によると、野外居住者というホームレスの定義(Persons who are in improvised dwellings, tents or sleeping out)では、2001年、2006年、2011年に、それぞれ、8,946人、7,247人、6,813人となっており、人口比では日本より多いが、それほど大きな違いはない。従来のコメントは誤解を生みやすい記述だったので、このように追加しておく。)

 各国比較の対象となった16か国はノルウェー、日本、ニュージーランド、メキシコ、スウェーデン、ポーランド、フランス、デンマーク、スペイン、英国、カナダ、オーストラリア、ドイツ、アイスランド、米国、チェコである。

(2024年8月30日収録、コメントの一部図録2970から移動)


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