調査方法については「昼間に街中を見回るだけで「テントや段ボール内の確認、本人への聞き取りはしていない」(都福祉保健局)という。ネットカフェなどで夜を過ごす人や昼間に働いている人は漏れてしまうという」(東京新聞2014.2.16)。従って、人数そのものはそれほど厳密なものではない。ただし、毎回同じ調査方法なので増減傾向には確からしさがある。 全国の人数は2003年の25,296人以降、徐々に減少してきている。2011年には、半数以下の10,890人、2012年には1万人を切って9,576人、それ以降もさらに減り、2024年には2,820人となっている。都道府県別・政令都市別の結果は図録7348参照。 これは格差や貧困が増えているという一般に流布している考え方とは相容れない結果である。 対前年減少率の推移をグラフにすると以下である。2010〜11年あたりが減少のピークだったがその後も安定的に減少傾向を続けていることが分かる。 減少の要因としてはホームレスに生活保護を受けさせる支援を行うNPOなどの活動も一因となっていると考えられる。減少の結果、現在のホームレスは以前と異なる内容を持つと報告するルポも見られる。 「世間の人たちはホームレスのことを悲惨だと捉えているでしょう。もちろんそういう人もいるんですよ。だけども、今となってはそういう人のほうが少ない。昔はそういう人ばかりだったけど、辛い人は生活保護に行けるようになった(2008年の年越し派遣村を機に)んだから。今でもホームレスやっている人っていうのは、僕らみたいに年金をもらっている人が多いんですよ」(國友公司の聞き取り、文春オンライン2022/01/21記事) ホームレス人数減少の理由としてあげられるのは「自立支援法で、一定期間入所して生活・職業相談を受け自立を目指す自立支援センターや、緊急的な一時宿泊所であるシェルターなどの設置が一定の効果を挙げたことです。また、東京都が進めた、アパートを借り上げ自立を促す地域生活移行支援事業や、自立を支援する民間団体などの活動も功を奏したとされています。」(東京新聞2012.11.7生活図鑑「426ホームレス」) 昼、行われているホームレス調査では、昼は仕事に出ているホームレスが捉えられていないということから、アーチ(ARCH)というホームレス問題を研究している市民団体が東京の山手線沿い地域で終電後に調査を行った。この調査結果と東京都が毎年昼に2回調査をしているうちの1回の調査結果を比べた表を以下に掲げた。これを見ると、夜のホームレスは昼の人数の2.5倍にのぼっている。
自立に向けた施策(ホームレス自立支援法による)
ホームレス人数の内訳を見ると男女別では男が圧倒的である。男女不明が多いのも目視調査であるからだろう。
主要な都市の増減を見ると、東京、大阪といった主要都市、及び多くの都市で減少傾向が続いている。2017〜19年には東京が1位となったが、それ以外は大阪がずっと1位である。 生活場所の変化としては、都市公園の減少が目立っている。各生活場所で人数が減少している。都市公園から追いやられ、河川敷に向かうというような状況はないようだ。 東京オリンピックの前には私の通っていた小学校の近くの赤坂の外濠 (弁慶濠)の池の縁にもホームレスが小屋を建てていたと記憶するが、多分にオリンピック開催にあわせて退去させられたのではなかろうか。汚い、臭い、見苦しいという理由でホームレス追い出しの動きは常に繰り返されてきている。「東京都渋谷区の区立宮下公園から2013年末、炊き出しなどをするホームレス支援団体が閉め出された。夜間などは公園を施錠するという規則が、支援より優先された。(中略)江東区の堅川河川敷公園では2012年、「憩いの場を不法占拠している」という理由で、ホームレスのテントが追い出された。近くの東京スカイツリーが開業し、観光客などが増加していた時期だ。07年末には東京メトロ副都心線の開通を前に、渋谷駅の地下通路からホームレスが追い出された。愛知万博の開催を前にした名古屋市でもテントの撤去があった。大型事業やイベントのたびにホームレスは居場所を失ってきた」(東京新聞「こちら特報部」2014.2.16) ホームレスの生活実態については、主要市の1,300人前後のホームレスに対して個別面接調査が行われた(2012年速報値)。以下はその結果である。高齢化、ホームレス生活長期化、無収入化が進行していることが分かる。 ■生活実態調査の結果概要(2012年、厚生労働省) *カッコ内は順番に2007年、2003年の値 1 年齢の状況
○ 平均年齢 59.3歳(57.5歳、55.9歳) ○ 年齢階層 ・40〜49歳 11.8%(10.6%、14.7%) ・50〜54歳 10.9%(15.9%、22.0%) ・55〜59歳 18.3%(26.8%、23.4%) ・60〜64歳 25.7%(21.2%、20.3%) ・65〜69歳 16.6% ・70歳以上 12.9% 2 路上での生活 (1)路上生活の形態 ○ 生活している場所が定まっている者は93.2%(84.4%、84.1%) ○ 生活場所 ・河川 29.0%(31.8%、17.5%) ・公園 28.2%(35.9%、48.9%) ・道路 15.9%(11.1%、12.6%) (2)路上生活の期間 ○ 今回の路上生活の期間 ・「10年以上」 26.0%(15.6%、6.7%) ・「5年以上10年未満」 20.2%(25.8%、17.3%) ・「3年以上 5年未満」 15.8%(18.9%、19.7%) ・「1年以上 3年未満」 17.7%(16.8%、25.6%) → 「5年以上」の者が46.2%(41.4%、24.0%)となっている (3)仕事と収入の状況 ○ 仕事をしている者は60.4%(70.4%、64.7%) → 主な内訳は「廃品回収」が77.7%(75.5%、73.3%)と最も多い ○ 仕事による収入月額 ・「1万円未満」 94.0% ・「1〜 3万円未満」 5.9%(29.8%、35.2%) ・「3〜 5万円未満」 0.3%(25.1%、18.9%) ・「5〜10万円未満」 0.0%(21.5%、13.5%) → 仕事をしている者の平均収入は、約0.4万円(4万円) 3 路上生活までのいきさつ (1)路上生活の直前の職業と雇用形態 ○ 職業 ・「建設・採掘従事者」46.2% ・「生産工程・製造作業者」 14.5%(12.2%、10.3%) → 建設業関係者が約5割を占める ○ 雇用形態 ・「常勤職員・従事者(正社員)」 42.0%(43.2%、39.8%) ・「日雇」 25.8%(26.2%、36.1%) (2)路上生活に至った理由 ・「仕事が減った」 34.0%(31.4%、35.6%) ・「倒産や失業」 27.1%(26.6%、32.9%) ・「病気・けが・高齢で仕事ができなくなった」 19.8%(21.0%、18.8%) 4 健康状態 ○ 身体の不調を訴えている者 26.7%(50.2%、48.4%) → このうち治療等を受けていない者 62.8%(65.8%、68.4%) 5 福祉制度 ○「巡回相談員に会ったことがある者」 78.2%(62.3%) →「会ったことがあり相談した者」 38.5%(35.9%) ○「シェルターを知っている者」 65.9%(61.9%) →「知っており利用したことがある者」 18.5%(13.1%) ○「自立支援センターを知っている者」 64.7%(66.3%) →「知っており利用したことがある者」 10.3%(9.1%) ○「生活保護を受給したことのある者」 25.3%(24.3%、24.5%) 6 自立について ○ 今後どのような生活を望むか ・「アパートに住み、就職して自活したい」 26.3% ・「何らかの福祉を利用して生活したい」 11.5% ・「アパートで福祉の支援を受けながら、軽い仕事をみつけたい」 11.9% ・「今のままで好い」 30.4% ○ 求職活動状況 ・「求職活動をしている」者 13.7%(19.6%、32.0%) ・「今も求職活動をしていないし、今後も求職活動をする予定はない」という者 63.9%(59.8%、42.0%) (2007年4月9日収録、2010年3月29日更新、地域別結果を分離独立し図録7348へ、2011年4月25日更新、2012年4月14日更新、7月9日生活実態調査の結果概要更新、11月12日東京新聞情報追加、2014年2月16日更新、追い出し情報追加、2014年5月12日更新、8月28日オーストラリアとの比較、11月17日オーストラリアとの比較は誤解を生みやすいので補訂-新井氏のご指摘による-、2015年6月17日更新、2017年5月3日昼と夜とのホームレス人数の違い、5月24日更新、2018年7月14日更新、2019年4月29日更新、2023年11月21日更新、米国参照データ、11月24日文春オンライン記事、2024年8月30日更新、国際情勢のコメントを新規図録2972へ移動)
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