年金、医療保険、雇用保険など社会保障の給付と負担の関係については、世代間の公平性について多くの議論が行われているが、地域間移転についても近年高齢化が進むなかでウェイトが拡大している。 上の図は、家計の社会保障の給付と負担の率(県民所得に占める割合)の推移を地方圏の代表として大分県、大都市の代表として愛知県について示したものである。負担率は徐々に上昇する傾向であるがその動きは地方圏と大都市圏とで差がない。他方、給付率は大都市圏ではほぼ横這いであるのに対して地方圏では負担率以上の上昇が起こっている。こうした動きの結果、大都市圏から地方圏への所得移転が拡大している。大分県の例では、今や県民所得の約10%は負担と給付の差から生じている。 こうした状況は高齢化や人口減少が地方圏でより深刻なことから当然の事態であるが、同じことを無闇に国土政策や産業政策で実現しようとすることから問題が生じると言えよう。ある財政学者が言うように無駄な公共事業を行うぐらいなら、同じ金額を現金で個人に配った方がましなのである(土居丈朗「財政学から見た日本経済 」光文社新書、2002年)。 なお、所得再配分調査により、地域ブロック間の所得再配分の状況を図録4669に掲げた。
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