治安の指標としては、犯罪率(実際に犯罪が多いか)と体感治安(住民がどれだけ治安上の安心を感じているか)とがある。犯罪率は客観指標、体感治安は主観指標であるが、治安そのものが主観的な側面を含むので、体感治安がやはり重要指標とみなされる。

 犯罪の国際比較のためには犯罪の定義が国により異なるので、同じ定義の犯罪の被害にあった者がどのくらいの比率でいるかを直接国民に聞いて調べる方式(いわゆる暗数調査)が必要である。このための国際共同調査である「国際犯罪被害者調査」が、国連地域間犯罪司法研究所(UNICRI)と国連薬物・犯罪局(UNODC)によって、多くの国の参加を得て実施されている。

 この国際共同調査に日本側として参加しているのは法務省の法務総合研究所であるが、日本国内の調査を「犯罪被害実態(暗数)調査」として2000年から12年まで4年おきに実施している。その後、国際調査が停滞したことなどから日本の調査も遅れ、19年は7年おき、24年は5年おきの実施となった。

 「犯罪被害実態(暗数)調査」では体感治安についても継続的に調査しているので、同調査による犯罪被害率とともに両方の推移を比べてみよう。

 体感治安を調べる設問としては、直接、治安が良いかどうかを聞く設問と夜道を歩くのは危ないと感じるかどうかという定番的な設問とがある。同調査では両方調べているので、その推移を犯罪被害率の推移とともに図に掲げた(ただし前者の設問は2004年調査から)。

 2000年から04年にかけては、警察の犯罪対処方法の厳格化による犯罪認知件数の増加の影響を受けて体感治安が悪化したが、実際の犯罪被害率は低下しており、両者の動きが食い違っている(「犯罪被害実態(暗数)調査」で犯罪率推移を追った図録2786参照)。

 しかし、それ以降は、おおむね、体感治安と犯罪被害率は並行的に変化している。2019年から24年にかけて、犯罪被害率も体感治安の2設問もすべて悪化しているのが印象的である。特殊詐欺やサイバー犯罪への不安の高まりに加え、SNSを通じ闇バイトとして募った実行役を使った凶悪犯罪の発生など、ネット社会特有の新型犯罪が増え、治安に関して油断できない状況が続いている点に注意が必要だろう。

(注)2024年10月などに関東1都3県でバールなどを持った男らが住宅に押し入り、住人に暴行を加えるなど凶悪な手口で世間を震撼させた「闇バイト」強盗事件が起こった。

 以下には、毎年行われている内閣府の「社会意識に関する世論調査」で体感治安の推移に近い回答結果を追った(同調査による治安以外を含めた社会情勢については図録3070参照)。これを見ても上でふれた動きが裏づけられよう。改善が進み、その後、安定していた体感治安が、2023年から一気に悪化局面に入ったことが明らかであろう。


(2026年3月17日収録)


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