ペットブームと言われて久しいが、ペット飼育率は1979年以降、一貫して3割台であり、若干の増加傾向ではあるが、目立った変化はない。種々の条件下でペットを飼う人は増えているが、その反面、都市化が進み、集合住宅居住が増えるなどペットを飼いにくい環境も多くなっており、両者が相殺し合っているからだと考えられる。ペットブームというよりペット市場ブームといった方が正確なのではあるまいか。 最近の2003年から2010年への変化としては、愛好率がかなり上昇し調査開始以来最高となっているのに対して飼育率がやや低下している点が特徴である。 高齢者のペット飼育率が高ければ、高齢人口の増加に伴ってペット飼育も増加することが予想されるが、年齢別の飼育率を見ると、40代〜50代の飼育率が高い一方で、高齢世代の飼育率は中年層と比べむしろ低いので、そうした動きはないようである(なおグラフには掲げていないが高齢層の飼育率自体も2000年〜10年では目立った上昇はない)。 住宅の形態別では、愛好率は相対的に若い世代の多い集合住宅の方が高いにもかかわらず、飼育率では、一戸建てが4割以上であるのに対して集合住宅は2割以下と大きな差がある。飼いたいのに飼えないという集合住宅におけるストレスが大きくなっている状況がうかがわれる(図録2600参照)。 実利的に役に立つ家畜でなく、愛玩動物であるペットを何故飼おうとするのかという点については、私見によれば、子育て本能仮説と群(むれ)本能仮説とが成り立つと思う。 子犬の可愛さは、明らかに、幼児を養育・保育する人間の本能が、幼児に似た目鼻立ちやからだの動きをもった子犬に対しても解き放たれるからだと考えられる。ペット飼育率が50代で最も高くなるのも、子育てがほぼ終了した後に、余勢を駆って子育て本能がペットに向かうからではあるまいか。 人類が動物であった時代から引きずる本能として、群の仲間が近くにいることが何となく安心感を与えると考えられ、同じ人間でなくとも生き物であるペットの存在によって、孤独が癒されると考えられる。鳥や金魚には幼児に似たところはほとんど無いが、やはりペット飼育の対象となる点には、この群本能仮説が有効である。 子育て本能仮説が主であれば、女性の方がペット飼育への愛好率が高い結果となるはずであり、群本能仮説が主であれば、男女に差はないであろう。下図に男女年齢別のペット飼育愛好度を掲げた。「大好き」の回答率は、年齢を問わず明らかに女性の方が高い値になっている。ここに子育て本能仮説のあらわれを見てとれる(30代だけは男性の方が高いがこれは小さな子どもがいる比率が男性の方が高いためであろう)。次ぎに「好きなほう」を含んだ「好き」の割合で見ると40〜50代で女性が、その他の年齢層で男性が上回っており、一貫した男女の差はないといってよい。大好きなほどではない好きさ加減であると男女に差がないことになり、こちらには、群本能仮説が当てはまっている。 年齢別のペット飼育愛好率を見ると若い世代ほど高い値を示している。これは、単純に、子どもに近い若い世代ほど玩具や遊びが好きということだろう。 (2009年9月7日収録、2011年10月5日更新、2012年1月29日男女年齢別図追加)
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