重視する人間関係は何かという意識調査から「希薄化する職場・親せき・地域とのつきあいと高まる家族の大切さ」について図録2412でふれたが、ここでは、それぞれの人間関係におけるコミュニケーションの状況の推移を「話をよくするか」という問に対する結果から探った。

 データのもととなったNHKの「日本人とテレビ」調査(5年おき)はマスコミュニケーションとの対比で対人コミュニケーションの状況を探るための設問を設けている。家族に関しては、日ごろよく話をしているかどうかという1つの設問(択一回答)、家族以外に関しては、どんな人と日ごろよく話をしているかというもう1つの設問(複数回答)の結果から、グラフを作成している。

 家族については、ほぼ70%がよく話をしているとしているが、2010年に関してはやや値が低下した。身寄りのない独居世帯など、そもそも家族がいないという回答も若干多くなっているが、そうした回答の増加が家族とよく話をしている人の割合の低下にしめる寄与度はそう大きくない。家族がいても別居してひとり暮らしをしている高齢者の増加はかなり影響していると思われる。

 家族以外でよく話をする人は誰かという点については、職場の人をあげる回答率は、ほぼ横這いであるのに対して、近所の人、親せきの人をあげる回答率は調査の度に減ってきている。友だちをあげる回答率も2000年代に入って減ってきている。

 まとめると、日ごろよく話をするかでコミュニケーションの程度を判断すると、職場の人を除いて、2000年代に入って全体としてコミュニケーションが薄まる傾向にあるといえよう。家族以外で日ごろよく話をしている人の選択肢の中には図に掲げたほか、図が見にくくなるため省略した「仕事上の知り合い」、「家族上の知り合い」、「趣味仲間」があるが、明確に増加傾向にあるものはない。

 対面して話をするコミュニケーションとともに携帯電話やメールでのコミュニケーションが増えている。これがここでの結果にどのぐらいの影響を与えているかは分からない。

 対人コミュニケーションは、必ずしも必要な情報交換に止まらず、充実した社会生活の内容をなすものでもある。経済発展とともに時間の余裕が生まれ、人間関係が豊かになってコミュニケーション頻度も高まってもよさそうであるが、実態は、逆方向の傾向となっていると見ざるを得ない。

 国民の生活時間の推移を見ても、仕事や家事の時間は減っているのに睡眠時間も減っており、自由時間活動に忙しいことが分かる(図録2320)。そしてここでの調査結果を考え合わせると自由時間は対人コミュニケーションに振り向けられるのではなく企業や広告が煽る豊かな消費生活など個人の気ままな生活に向かっているように見える。そして病気や介護などへの対処についても個々人が専門機関に依存する割合が高まっており特段に対人コミュニケーションを介する機会もなくなっているのであろう。

 そうした意味では、家族、コミュニティ、職場ではなく、買物・飲食・レジャー・スポーツなどの消費生活や医療介護の中で話をする機会が増えているのかも知れない。選択肢に「お店の人」、「病院や介護関係の人」を加えてみるとどういう結果になるだろうか。

(2012年10月29日収録)


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