日本ではHIV/エイズの感染者の新規発見数がなお基本的には拡大傾向にあると考えられるが(図録2250参照)、世界ではどのような状況であろうか。 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の報告によれば2009年に世界のHIV感染者数(子どもを含む)は3,330万人(成人感染率0.8%)、2009年中の新たな感染数は260万人、同年のエイズ死亡者数は180万人とされている。地域別の感染者数ではサハラ以南アフリカが2,250万人と世界の3分の2を占め、最も多く、第2位の南アジア・東南アジアの410万人を大きく上回っている。 マップには2009年における世界各国のHIV成人感染率の分布を示した。感染率の高い国から数値を末尾の表に示したが、スワジランドが世界最高の26.1%、ボツワナが第2位の23.9%などアフリカ南部の感染率の高さがひときわ目立っている。 こうした国は、エイズによる死亡率の高さもあって平均寿命も30歳代か40歳代と非常に低くなっている(図録1620参照)。 日本は感染率的には0.1%未満と低いレベルである。 地域別の成人感染率については、サハラ以南アフリカが5.0%と群を抜いて高く、次はカリブ諸国の1.0%、東欧・中央アジアの0.8%と続いている。 南部アフリカではなお15%以上の高い感染率の国が存在している。サハラ以南アフリカ以外で感染率が高い国としては、ロシアの1.0%、タイの1.3%などが目立っている。 成人感染率(15〜49歳)の高い国(2009年推計)
世界の感染者数は一時期ほどではないが増加傾向にある。しかし新規感染者数はかなり前から減少傾向にあり(1999年310万人から2009年には260万人へ)、またエイズ関連の死亡者数も減少している。 UNAIDSの2010年報告書についてふれた英エコノミスト誌は、新規HIV感染者数の減少傾向の要因について以下のように整理している(The Economist 2010.11.27)。 (1)行動様式の変化 @初体験の遅延、A不特定対象の性交の減少、Bコンドーム使用の増加 (2)母子感染、授乳による感染の減少 (3)既感染者への薬物療法の普及 エイズ関連死亡者数の推移については図に掲げたとおりである。欧米諸国に続いて感染率の高いサハラ以南アフリカやカリブ諸国でも近年死亡数のピークを過ぎていることが分かる。これに対して東欧・中央アジアはなお増勢にある。 なお、旧図録2260xでは、2005年のUNAIDS報告等によって、エイズ拡大の経緯など地域別の状況を示した。また旧図録2260wではUNAIDS推計の感染者数の見直しの状況にふれた。これら過去の図録も適宜参照されたい。 (2005年7月4日収録、2006年11月28日更新、2008年10月23日更新、2010年12月6日更新)
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