かつては金持ちの方が太っていたが、今は貧乏人の方が太っているといわれる。この点を国際的に確かめられるか見てみよう。

 金持ちと貧乏人と言えば所得水準の違いであるが、ここでは国際比較がより容易である教育水準の違いで肥満度がどのくらい異なるのかを掲げた。具体的には教育水準の低い者の過体重の比率(BMI25以上の比率−日本ではこれが肥満の基準であるが国際的にはBMI30以上が肥満の基準とされる−)を教育水準の高い者の過体重比率で割った数値を示している。

 結果は、ほとんどの場合、1を越えており、教育水準の低い者の方が高い者より太っていることが分かる。

 男女ごとに肥満度格差が大きい国の順にデータを示しているが、一目瞭然なのは、男性の差より女性の差の方がずっと大きいことである。女性が肥満かどうかについて敏感である点は世界共通といえよう。中でも韓国女性の場合は5倍の違いとなっており、これ自体世界で最も大きな差である点が目立っているが、韓国の男性の場合、米国人男性とともに、唯一、教育水準の高い者の方がやや太っているのとコントラストが激しい点でも目立っている。

 この他で教育水準による肥満度の差が大きい国としては、男ではフランス、女ではスペイン、イタリアなどが挙げられる。逆に肥満度の差が小さいことで目立っているのは男女とも先進国一の肥満国である米国である。もっとも米国人の場合、ほとんどが過体重(BMI25以上)なので差が出にくいだけで、厳密な肥満比率(BMI30以上)で比較すれば差が出るのかもしれない(図録2222、図録8800参照)。

 日本については教育水準による差のデータがないので、代わりに所得水準による差のデータを参考までに掲げておいた。男性の差は小さい点、女性の場合は約2倍と世界の中でも真ん中ぐらいの差である点がうかがえる。

 対象12か国を掲げると、女の格差の大きな順に、韓国、スペイン、イタリア、フランス、スウェーデン、日本、オーストリア、カナダ、ハンガリー、英国、オーストラリア、米国である。

(新資料)

 OECDの別資料で、日韓を除くOECD諸国に関して、上記より国数の多い教育水準別肥満度格差のデータが得られたので、下にグラフ化した。上掲データが過体重比率(BMI25以上)の格差であったのに対して肥満比率(BMI30以上)の格差が計算されている。

 データは24か国にわたっているが、そのうち、男の格差倍率が女の格差倍率を上回っているのは、チェコとノルウェーのみであり、残りは全て女の格差が男の格差を上回っている。やはり階層別の肥満度の違いは、特に女性で顕著であることが明かである。生活に余裕がある女性ほどスリムというのが世界的傾向なのである。

 図の国の並びは女の格差の大きな順であるが、男の格差は女の格差とは連動していないことも目立った特徴である。したがって、女の格差の大きい国ほど、女の格差と男の格差の違いが大きくなっている。

 米国については、男の格差と女の格差とで、上記過体重と同様、余り差がない。


 対象24か国を掲げておくと、図の順番に、スロバキア、ポーランド、スロベニア、トルコ、スペイン、フランス、オーストリア、ベルギー、エストニア、ギリシャ、チリ、オランダ、ハンガリー、カナダ、チェコ、イスラエル、オーストラリア、スウェーデン、英国、ニュージーランド、アイルランド、ノルウェー、米国、アイスランドである。

(2013年2月16日収録、8月15日新資料追加)


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