介護報酬の額は、原則3年に一度、年間の総額が改定され、その枠内で厚労省が介護サービスの内容や価格を決める。医療費や薬価に関する診療報酬が2年おきに改定されるのと対をなす(診療報酬の改定については図録1933)。ここでは、3年おきの介護報酬の改定率の推移をグラフにした。 関連する介護給与の国際比較は図録2065参照。 2009年度、12年度は、人材が不足する介護従業者の処遇改善が大きな課題となり、改定率がプラスとなっていたが、それ以外の時期は、高齢化に伴って需要が急増した介護サービスを急いで充実させるため、やや高めに設定されていたと思われる介護報酬の抑制が基調となっている(下表参照)。 2015年度改定についても、在宅支援サービスは充実へ増額されるが、利益を上げているとされる施設介護は減額の方向となり、1月11日の2015年度予算案の財務大臣と厚生労働大臣の閣僚折衝で、総額が9年ぶりの引き下げ(-2.27%)となった(東京新聞2015年1月12日)。 改定率については、財政支出を抑えたい財務省が国民負担の軽減、社会保障の持続性の観点から大幅引き下げを主張し、介護サービスの充実と介護事業者の安定経営を目指す厚生労働省の間で綱引きが行われていた。財務省の財政制度等審議会(財政審)は介護事業者の利益率を中小企業並みにするため6%減を求め、財務省はこれに介護職員の待遇改善の財源確保を加味して、4%台の引き下げを主張。一方、当初プラス改定を求めていた厚労省は1%程度の下げ幅にとどめたい考えだったという(同1月5日)。 2015年度は2000年に介護保険制度がスタートして以来の大きな見直しとなった(下表参照)。医療や年金の制度と同様、負担増、給付減が基本的な特徴となっている(図録2796参照)。 厚生労働省は、2018年度改定に先立って、基礎資料となる介護保険サービス事業所の経営実態調査に関する以下のような結果を公表した。2016年度の利益率は3.3%と前回調査13年度の7.8%から大きく低下しているが、これは、「15年度に介護報酬が引き下げられたことに加え、人手不足で人件費が膨らんだことが主な要因」(東京新聞2017.10.27)とされる。サービス種類別では、利用者が多いサービスとしては、特別養護老人ホーム(特養)や介護付き有料老人ホームの利益率が大きく低下した反面、訪問介護(ホームヘルパーのサービス)や通所介護(デイサービス)の利益率は全体平均を上回る水準だったので、「財務省は「不必要なサービスを提供して利益を上げている可能性がある」などと指摘しており、報酬引き下げのターゲットになりそうだ」(同上)。 2018年度改定は+0.54となった(首相と財務大臣合意)。「厚生労働省の調査では、介護事業所の平均収益率は大幅に悪化している。安倍政権は「介護離職ゼロ」を目標に掲げており、事業所の経営安定化や人材確保のために報酬増が必要だと判断した」(東京新聞2017.12.16)。 介護報酬の3年おきの改定は、2018年度においては、2年おきの診療報酬の改定と6年ぶりで同時となった。2025年に向けた最後の同時改定なので、医療と介護の切れ目のない連携や要介護者を増やさないような自立支援の強化を目指すものとなっている(毎日新聞2017.12.19、末尾の表参照)。診療報酬の改定率については図録1933参照。 2021年度改定は+0.70となった(厚生労働大臣と財務大臣合意)。 政府は2023年12月16日、2024年度の介護報酬について1.59%引き上げる方針を決めた。他産業の賃上げで介護業界からの人材流出が進み、担い手確保のために引き上げが必要と判断した。今回は6年に1度の診療報酬との同時改定で、同時改定時では初めて診療報酬の改定率(0.88%引き上げ)を上回った(毎日新聞2023.12.16)。 改定率1.59%のうち0.98%は賃上げに充てると決められていたが(24年6月から実施)、翌24年1月に厚生労働省がまとめた改定の方針は下図の通りである。
(2015年1月6日収録、1月12日更新、1月20日表加筆、3月5日2015年度の介護制度の変更の表追加、2017年10月31日経営実態調査結果、12月17日18年度改定率、12月19日改定内容、2018年1月27日2018年度の介護報酬配分方針のポイント、2020年12月18日更新、2023年12月16日更新、2024年1月23日2024年度改定のポイント)
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