2020年にパンデミックが宣言された新型コロナウイルスの感染による致死率がイタリアで高く、日本、韓国、ドイツで低い理由のひとつとして、医師・看護師数や医療施設の充実度、特に病院のベッド数が十分かどうかが関係しているとされ、OECDの病床数データが引用された。

 ここでも、同じデータを掲げた(医師・看護師数については図録1930参照)。

 OECD諸国の中で、日本や韓国は人口千人当たり10床以上の病床を有し、ドイツも8床と多いのに対して、イタリアは3.18床とかなり少ないことがうかがえる。

 病床数が新型コロナウイルスの致死率を大きく左右するとしたら、やはり病床数の少ない英米やスウェーデンなども似たような状況となるはずであるが、今のところ、そうよう状況は報告されていない。

 なお、OECD諸国は、一般に、高齢化が進み医療費の負担が大きくなってきているので(主要国のこうした動きは図録1900参照)、医療施設の合理化が進んでおり、2007年当時の病床数と比較すると、多くの国で値が低下していることが分かる。イタリアも病床数が減少しているが、他のOECD諸国と比べて特に際立っている訳ではない。

 そうだとすると、今回のイタリアの危機的な状況は、全国的な医療の脆弱性によるものというより、北部の特定地域に感染者や患者が集中して、急増したためと考えた方がよいのかもしれない。

 日本でも、当初は北海道や和歌山といった特定地域で感染者が急増したが、最近では、3大都市圏など人口規模の大きな地域で感染者が増えており、特に特定地域に患者が集中しているとも言い難い。これが、日本で比較的新型コロナによる死亡者が他国と比較して特に多くない理由なのかも知れない。

 このOECD諸国の病床数のデータは、従来は、日本の医療費の削減にとっての課題として、つまり日本の病床数が不必要に多すぎる点を明らかにするためによく引用された。もし、多すぎる病床が、新型コロナウイルスへの対策にとっては、むしろ幸いしているとしたら皮肉なことである。

 対象国はOECD諸国36カ国であり、人口当たりの病床数の少ない順に、メキシコ、チリ、スウェーデン、カナダ、英国、デンマーク、ニュージーランド、米国、トルコ、アイルランド、スペイン、イスラエル、アイスランド、イタリア、フィンランド、オランダ、ポルトガル、ノルウェー、オーストラリア、ギリシャ、スロベニア、スイス、ルクセンブルク、エストニア、ラトビア、ベルギー、スロバキア、フランス、リトアニア、ポーランド、チェコ、ハンガリー、オーストリア、ドイツ、韓国、日本である。

(2020年3月17日収録)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 健康
テーマ  
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)