相関関係から因果関係を単純に導き出すのは誤りだが、貧困がそれぞれ独立して健康保険カバー率の低さと平均寿命の低さの要因になっているというより、貧困→健康保険カバー率の低さ→平均寿命の低さという因果関係の系列を想定するのが自然であろう。 すなわち米国では、日本のように社会保険として健康保険が国民皆保険となっていないため「地獄の沙汰も金次第」の状況となっていると考えられる。米国の人気テレビドラマ「ER」を見てもそういう状況がビビッドに描かれている。 日本については1800参照。米国は医療保障が充実していないにもかかわらず医療費では世界トップである(1900参照)。米国は少なくとも医療制度に関しては反面教師であると考える必要がある。 この図録は、著書「統計データはおもしろい!-相関図でわかる経済・文化・世相・社会情勢のウラ側-」の10-2で使用している。 なお、英国Economist誌によれば(The Economist May 14th 2016)、乳幼児や49歳以下の層で1990年以降に(特に2000年以降に)貧困層ほど死亡率の改善が進んだため、平均寿命の地域別格差も縮小しているとのことである。「1997年に連邦政府も各州が、貧困だがメディケアを受けられるほどではない家族の子とも達に健康保険を提供することに対して支援を行うようになった。この結果、退院後の母子に起りがちな乳児死亡が避けられるようになったと思われる。2014年の研究により、こうした死亡がヨーロッパに比して常に高い米国の乳児死亡率の主たる要因になっていることが分かっているのである」(同資料)。同誌が参照した原資料にはカウンティ・グループの貧困度別の平均寿命に関する以下のような図が掲載されている。
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