OECDのデータベース(OECD.Stat)によって、OECD諸国、及び中国、ロシアの各地域別の平均寿命のばらつき(不平等度)を示した図を作成した。

 各国の地域分布を比較するためにOECDは、人口規模に大きな違いが生じないように複数のレベルの地域区分を設定している。レベル2地域(TL2)とレベル3地域(TL3)がよく使われるが、日本では、地方ブロック区分がTL2であり、都道府県区分がTL3である。米国では州別、中国では市省別がTL2となっている。

 ここでは、TL2で各国の地域別の不平等度を比較している。ただし、日本では地域ブロック別より都道府県別の方が通用しているので、地域分布をTL3で示した。

 全体を概観すると、長寿命国の中で地域の不平等度が小さいのはスイス、日本、大きいのはスペイン、フランスである。日本はTL2で見ればもっと不平等が小さくなる。中寿命国の中で不平等度が比較的小さいのはチリ、大きいのはカナダ、英国、米国である。OECD所得と比較して低寿命の中国、ロシアの不平等度はかなり大きい。

 人口規模の小さな国では地域数自体が少なくなり(ルクセンブルク、エストニア、ラトビアなどは国一本)、したがって地域格差も小さくなる傾向がある。ただし、ベルギーは、オランダ語に近いフラマン語を話すフランデレン地域とフランス語を話すワロン地域と両者の中間のブリュッセル都市圏の3地域から成るが、平均寿命の長いフランデレン地域と短いワロン地域との地域格差はかなり大きくなっている(図録9456コラム2参照)。

 スペイン、フランス、ポルトガルなどで地域格差が大きい理由のひとつは、平均寿命の低い海外植民領があるからである。

 この他、国内地域でも、先住民アボリジニが住むオーストラリアの北部準州、イヌイットの住むカナダのヌナブト準州、マオリ人が多く住むニュージーランドのギズボーン地方、少数民族が多く暮らす中国の雲南やチベットなどは、平均寿命で国平均を大きく下回っており、その結果、こうした少数民族を抱えた国では平均寿命の不平等度が大きくなる傾向にある。

 日本の青森や英国のスコットランドは少数民族の地方とは言えないが、民族差に近い要因から平均寿命がやや低くなっているとも考えられよう。

 下の方からではなく上の方から地域別の不平等度を大きくする要因として、経済状態や衛生状態の良好な首都圏で国平均より平均寿命が高くなっている国もある。スペインのマドリード、フランスのパリを含むイル・ド・フランス、英国のロンドン圏(Greater London)、チェコのプラハ、ハンガリーのブダペスト、中国の北京などでこうした特徴が見られる。

 中国では北京だけでなく、上海、天津といった先進経済都市で平均寿命が特段に高い点が目立っている。

 なお、平均寿命の特段に高い地域は、こうした首都圏以外に、フィンランドのオーランド自治県、ギリシャのイピロス、ロシアのイングーシ共和国のように地方色の濃い理想郷のような地域である場合もある。

 米国については、所得水準もからませながら米国の各州別の平均寿命を日本の各県別の平均寿命と比べた図録1710を参照されたい。

(2021年8月23日収録)


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