死亡する年齢は現代と原始時代とで大きく異なっている。時代を大きくさかのぼり、縄文遺跡の出土人骨から推定した死亡年齢の分布を図に掲げた。対比として掲げた現代人のデータは高齢化がまだそれほど進んでいなかった1985年のものである。

 15歳以上の縄文人は、20代後半で最も多く死亡し、30代後半と20代前半がこれに次いで多かった。このため、20代前半から30代前半までに60%以上が死んでいた。

 60歳以上の死亡者は15歳以上の死亡者総数の実に0.4%に過ぎなかった。高齢者そのものが非常に珍しい存在であり、老人になれるということは僥倖に近いことだったことがうかがえる。

 現代人では、死ぬのは50代から多くなり、60歳以上が8割とほとんどであり、縄文人との違いは明確である(なお、高齢化が進んだ2016年には60歳以上で死ぬ割合が93.5%にまで上昇している)。

 10代後半から40代までの分布についても、縄文人のように20代〜30代前半に集中しておらず、年齢を重ねるごとに死亡者数は増えていく点で違いが目立っている。現代人では若いうちに死ぬのは稀少ケースとなっているのである。

 縄文人の男女別死亡年齢分布を見ると、男女の違いはそれほど大きくないが、女性は、20代前半までと40代後半以降で男性より死亡者が多かったようだ。つまり、男性と比べて、早く死ぬか長く生きるかどちらかだったようだ。男性の場合、20代後半から40代前半の働き盛りの時期に狩猟や争いで死ぬ確率が高かったのではなかろうか。

 同じ男女別の死亡年齢の食い違いが、女性の出産に起因する死亡率の高さによるものと考える見方もある。「男性と女性の年齢分布にみられるズレは、明らかに出産が影響していると思われる。そうすると小林氏の調査からサンプル数が少ないという理由で除外されている幼少年、とくに乳幼児の死亡率の高かったことも当然予想される。この現象は狩猟採集社会ばかりでなく、現代の発展途上国でもふつうに見られることだ。若い年齢での結婚と出産、それによっておこる初産での損傷率の高さ、また出産場所の不衛生さ、栄養不足、離乳食のわるさなども原因であろう」(小山修三「縄文探検―民族考古学の試み」中公文庫、p.272、原著1990年)。

 女性の方が長寿である点についても、男性が男性ならでは活動により短命となっているという見方もあろうが、考古学者の小山氏は、むしろ、女性の優秀さや生んだ子どものおかげによると考えている。

 女性の死亡は「40歳以上は男性をうわまわり、男性にはなかった60以上の例もあり、ある年齢をこえると女性のほうが長寿であるという現象が出ている。人間を一種の機械としてみれば女性のほうが上等であるということなのであろうか」(同上、p.272)。「老後をまっとうできる女性は、そうできるための子どもたちを多くもっていたといえるのではないだろうか」(p.258)。

(2018年8月19日収録、9月12日・13日小山氏引用) 


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