1975年に生まれ、2024年に49歳を迎えた女性の未出産比率をOECD各国について見てみると、最高は日本の28.3%、最低はポルトガルの8.93%となっている。OECD以外では中国が4.91%とかなり低くなっている。 日本は2位のスペインの23.9%を大きく上回っており、子どもを産まなかった女性が先進国トップ、事の性格上、ほぼ確実に世界1多い国である。 現在の合計特殊出生率はOECD諸国の中でも韓国の方が日本より低い(図録1550)。すなわち現在では子どもを産む女性が韓国の方が少ない。とはいえ、2000年以降にそうなったのであり、無子比率は韓国の方が12.9%とずっと低い。 データのある主要先進国(G7諸国)の順位を高い方から掲げると以下である。 1.日本 28.3% 2.イタリア 22.5% 3.ドイツ 20% 4.カナダ 18.8% 5.英国 18% 6.フランス 14.75% 7.米国 10.3% G7諸国の間でも差が大きい点が目立っている。米国の場合特に値が低いが、図録8650で見たように黒人やヒスパニック系の出生率が以前はかなり高かった影響もあろう(今では非ヒスパニック白人とそう大きな差はない)。 20年前、40年前に生まれた女性の無子比率と比較すると、多くの国で値は上昇していることが分かる。世界的に子どもを産まない女性が増えているのである。 各国の無子比率の変化を細かく確認してみると以下のように分類できよう。
北欧諸国はAの特徴を有しているが、大きく進んだ無子傾向がむしろ行くところまで行って横ばいに転じたためと考えられよう。 主要先進国についてはCのケースが多くなっている。 日本は1935年生から1955年生にかけてはほとんど変化がなかったのが、1955年生の11.9%から1975年生の28.3%へと2.4倍と大きく増加している点が目立っている。増加幅も世界1となっている。 こうしたデータをもとに「日本人50歳女性”27%が生涯子供いない”の示す事〜未婚、貧困、子育て難、不安、価値観の多様化〜」と題されたオンライン記事(2023/01/30)が東洋経済オンラインに掲載されているので参照されたい(ここ)。 このデータと関連して、女性は子どもを産むべきかについての考え方が政界、言論界で大きな波紋を呼ぶ事態が最近も起こった。 2024年5月18日に静岡県知事選応援演説における地元選出の上川陽子外相のこの発言の「うまずして何が女性」の部分が見出しとして報じられ、衆議院総選挙がいずれ行われるという気運の中、総理候補の1人という声もある上川外相の考え方が女性への配慮に欠ける自民党の古い考え方だのあらわれだと批判された。 翌19日、真意と違う形で受け止められかねない発言だったとして上川外相は発言を撤回。同日、岸田文雄首相も「誤解を招く表現は避けるべきだと私も思う」と語った。一方、発言が撤回された後も「言葉狩り」「切り取り」などとして発言を擁護し、女性への配慮を求める側を批判する言説がSNSで広がった(東京新聞「こちら特報部」2024.5.23)。 なお、上川発言と関連して、同じ静岡県選出で当時厚生労働大臣だった柳澤伯夫衆議院議員が講演の際に例えで使った「産む機械」の発言がやはり切り取られて報道され大きな波紋を呼んだ事件が思い起こされる。静岡の県民性からは、県民が保守的ということではなく、気候が温暖でのんびりした風土ゆえ、自分の発言の影響力について警戒心が足らぬのであろう。 データの対象国は、図の順に日本、スペイン、イタリア、オーストリア、ドイツ、ポーランド、フィンランド、カナダ、英国、アイルランド、ハンガリー、オランダ、フランス、リトアニア、デンマーク、エストニア、韓国、スウェーデン、チェコ、アイスランド、スロバキア、ノルウェー、米国、ポルトガル、ブルガリア、中国である。 (2024年5月23日収録、6月22日1970年生から1975年生の無子比率へと更新)
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