結婚と出生のタイミングの変化についての人口動態統計データを図録化することとする。

1.できちゃった婚の増加

 できちゃった婚の比率の変化、正確には、「初めて生まれた子どもの妊娠期間が結婚期間より短いケースの出生数比率」の変化をグラフにした。密接にリンクしているが、できちゃった婚の一般的な理解である「結婚したときに妊娠していた婚姻数の割合」ではないのでその点は注意されたい。出生数割合では、結婚しても子どもが生まれなかったケースが母数から除かれているという違いがあるのである。

 図には母親の年齢別にデータを掲げているが、総数では、1980年には12.6%であったのが、20年後の2000年には26.3%と2倍以上に拡大したことが分かる。

 2009年の母親の年齢別データを見れば分かる通り、若い年齢ほどできちゃった婚が多い。10代後半では8割に達しており、20代前半でも6割を越えている。20代後半では4分の1以下とかなり少なくなり、30歳以上だとできちゃった婚は1割程度となる。

 母親の年齢別の変化を見ると、いずれの年齢も増加傾向にあるが、10代後半については2000年以降横這いに転じている。行くところまで行ってしまったと考えられる。

 総数のできちゃった婚比率が2000年から2009年にかけて低下しているのは、結婚年齢が20歳代後半以降の割合が大きくなっているためであり、できちゃった婚が少なくなっているためではない。

 できちゃった婚が増えているのは、結婚へのステップが遅れ気味となる中で、日本社会では婚外子が一般的でなく、また結婚自体の法的な成立自体は極めて容易という事情を反映しているといえよう(図録1520、図録1538参照)。

2.「結婚してから妊娠」から「妊娠してから結婚」へ

 できちゃった婚の増加を、同じことであるが、第1子誕生までの結婚期間の変化から追ってみよう(2番目の図)。

 月単位にこの期間のシェアを見ると、1975年当時は、結婚後10カ月で第1子を出産するケースが非常に多かった(結婚後9カ月と10カ月の出産がそれぞれ10%以上)。

 ところが、1985年には、もうひとつのピーク月である結婚後6カ月の出産が増えてきた。つまり妊娠が判明して結婚した後、出産というケースが増えてきたのだ。

 1995年には、10カ月と6カ月のピークが並んだ。そして2005年以降は、むしろ6カ月のピークが中心となり、10カ月のピークはピークらしくなくなった。

 こうした変化は、わずか30年間に、日本女性の婚姻パターンが「結婚→妊娠→出産」という順序から「妊娠→結婚→出産」という順序に代わったことを意味している。すなわちできちゃった婚が一般化したのである。

3.結婚後3年目以降に初めての子を産む比率が増大

 結婚後10カ月の出産ピークがピークでなくなった理由は、できちゃった婚の増加だけではない。むしろ、結婚と出産の時期の時間差の拡大、すなわち出産の繰り延べが進んだ影響が大きい。年単位に結婚後何年目の出産が多いかを調べてみると(2番目の図の中の棒グラフ)、できちゃった婚を含む結婚1年目の割合は1975年の39.4%から2009年の35.4%へと減少しており、2年目の出産も減り、これに代わって3年目以降の出産が増えているのである。結婚5年目以降の出産割合も5.0%から15.3%へと3倍にも拡大している。

 日本女性の婚姻パターンは、「結婚→妊娠→出産」という連鎖パターンから、片方で、「妊娠→結婚→出産」という連鎖パターンと、もう片方で、「結婚→仕事・遊び等→出産」という中継パターンへと両極化して来ている訳である。平行して未婚率も上昇している(図録1540)ので、結婚後の出産の遅れとあいまって、少子化が進行する結果となっている。

(2012年3月17日収録) 


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