男女がカップルをなしている状態(有配偶の状態)を法律婚(結婚)と事実婚(同棲)に分け、日本を含む6か国について調査した結果をグラフにした(出所は内閣府「少子化に関する国際意識調査」)。調査対象は20〜40代に限られているが、これはこの年齢層が子どもを生む年代だからである。なお、もっと多くの国の間で比較したデータは図録1538b参照。

 20〜40代の合計で見てみると、以下のような状況となっている。
  • 日本と韓国は同棲が少なく、米国、フランス、スウェーデンで同棲率が高い。米国よりフランス、スウェーデンで同棲率が高い。これは各国の婚外子比率の高さと整合的である(図録1520参照)。
  • 結婚と同棲を合わせた有配偶率では、日本と欧米とでは大きな違いはない。
  • 未婚・未同棲率(結婚・同棲をしたことがない者の比率)は、韓国がやや多いが、日本と欧米ではそれほどの違いはない。
  • 結婚、同棲、未婚・未同棲のいずれでもない者は離婚した者が多くを占めるが、米国で特に多い。こうした状況は各国の離婚率(図録9100)や母子家庭の比率(図録1530)と整合的である。
 年齢別に見ると、欧米の同棲率は20代で特に多く、フランスとスウェーデンでは法律婚の比率を上回っている。この分、20代の有配偶率は日韓が低く、欧米が高くなっている。20〜40代の計の有配偶率は両者で余り変わらないので、日韓はカップル化が欧米より遅いだけである。

 米国、フランス、スウェーデンの同棲中の比率は、20代から40代にかけて減少している。これは、@若い世代ほど結婚より同棲を選ぶ習慣が広がっているため、A同棲が長くなって結婚にチェンジする者が一定程度いるため、B高年齢の新たなカップルは同棲より結婚を選ぶため、という3要因が考えられよう。

 特にフランスの30代と40代とで、同棲比率が大きく異なっているのが目立つが、フランスではそれぞれの年代がカップルを形成する年齢に同棲慣習が一気に広がったためと考えられる(図録1520でふれたフランスにおける婚外子割合の大きな変化にもこれがあらわれていると考えられる)。

 韓国では若年層の未婚率が日本以上に高くなっているのが目立っている。NHK海外ネットワークでは、「特集:韓国で急増「シングル族」」と題してこの点を報じている(2011年10月1日放映、紹介HP)。結婚して家族の中で果たさなければならない役割の大きさから、結婚せずに仕事に生き甲斐を見出す若い女性が増えているというのだ。

 フランスやスウェーデンで同棲が多いのは、、フランスのPACS(パクス、連帯市民協約)やスウェーデンのサムボのように同棲を法的に保護する制度があり、これを利用して同棲している者も多いためである。

 フランスで正式に結婚するためには教会で挙式する必要があり、また離婚するには双方が合意していても裁判を行う必要がある。これに対して、PACSのカップルになるのは裁判所に書類を提出すればよく、PACS を解消するにも書類を提出するのみでよいなど手続きが簡略化されている。PACS を結んだカップルは、課税など一部は異なるものの、概ね結婚に準じる法的保護を受けることができる。スウェーデンのサムボも同様である。日本の結婚・離婚は、双方の合意がありさえすれば、市町村への結婚届と離婚届の提出だけでよく、実は、フランスのPACSに近いものと言える(コラム参照)。

 年齢別の出生率(下図)から分かるとおり、日韓の出生率の低さは、年齢全般の低さと遅いピーク年齢という2面がある。後者は、出生率のピークがフランス、米国では20代後半なのに対し、日韓は30代前半であることにあらわれている。


 少子化対策として、出産の遅れ防止につながる早期のカップル化を促すため、日本でもヨーロッパのような事実婚への保護制度を新たに整備すべきだという論調が見られるが、既に日本の結婚制度は手続きがかなり容易なので、新たな制度によるカップル促進効果は薄いと考えられる。

【コラム】離婚が容易な日本、離婚が困難なフランス

<以下に、フランスなどと比較して日本の離婚が容易である点について、ヤフージャパンの弁護士ドットコムの記事「 「離婚4回」も珍しくない! 日本は離婚がしやすい国だった」(5月28日(火)16時40分配信)を引用する。日本で結婚や離婚が容易な背景については図録1520参照。>

 そもそも、日本の法律では、結婚と離婚の回数に制限がないのだろうか。島野由夏里弁護士に聞いた。

●キリスト教国では簡単に離婚が認められない

「実は、日本は『とても離婚がしやすい国』なんです」。島野弁護士はこう切り出した。

「婚姻・離婚制度は一般に宗教との結びつきが強く、キリスト教国では簡単には認められない傾向があります。例えばイギリス、フランス、イタリア、オランダ等、ヨーロッパ諸国のほとんどでは、協議離婚の制度はありません。つまり、『裁判所の手続を通さなければ、離婚ができない』のです。

裁判で離婚が認められるための条件も厳しく、例えば『数年以上の別居の後でなければ、離婚の裁判もできない国』や、そもそも離婚制度自体がない国もあります。こういった国々では回数制限はありませんが、離婚手続に長い時間がかかるという意味で、簡単に離婚・再婚を繰り返すのは難しいですね」

――そんなに厳しいと、結婚するときの覚悟も相当なものだろう。

「はい。そのため、ヨーロッパ諸国では、簡単には結婚をしないという傾向があります。私の友人(フランス人)も、彼と一緒に暮らしているうちに子どもを産みました。彼女の話では、フランスでは、第一子出産後、第二子出産前に結婚するカップルが多いそうです。離婚の手続がそこまで大変であれば、結婚自体に二の足を踏む気持ちも解りますよね。入籍をしなくても、社会的には家族として認められているため、不自由もないようですよ」

――それに比べると日本は?

「離婚をしたいと思い立ったら、すぐに離婚できる制度です。結婚と離婚の回数にも、制限はありません。また、同じ人と何度も結婚・離婚をすることも可能です。

夫婦げんかをして離婚届けを出し、直後に仲直りをして、同じ人と婚姻届を出すというケースも珍しくはありません。これだと、結婚・離婚回数が1回ずつ増えますね。林下さんのケースは、離婚回数としては多く感じられるかも知れませんが、同程度の方もいらっしゃいますよ。

日本はヨーロッパとは逆に、入籍の有無によって法的な効果にかなり差がありますので、家族になるなら結婚をするという意識が強いです。また現代の日本人は、一度結婚したら我慢しても添い遂げるという感覚は薄れてきていますので、離婚に対する抵抗感は希薄になってきているのではないでしょうか」

――結婚・離婚を繰り返すことに、法的問題点はないのでしょうか?

「お子さんがいらっしゃる場合は、将来的に相続で複雑な問題をはらみます。例えば、子連れ再婚同士のご夫婦の場合、どちらが先に死亡するかで、どちらのお子さんたちに相続がなされるか、その割合が大きく変わってきます。ですので、再婚のご夫婦の場合、後の憂いを防ぐため、遺言を作成するなどの準備を行っておくことをお勧めしております」

(2012年1月2日収録、2013年5月29日コラム追加) 


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