生涯未婚率が上昇を続けている(図録1540参照)。生涯未婚率の上昇は、結婚に至らない男女の増加を意味しているが、「結婚しない」という側面と「結婚できない」という側面の両面がある。マスコミや有識者が強調しがちなのは、貧困問題や就職困難の問題とからめて、「結婚できない」という側面である。また、地方から流出する若い世代の男女ギャップ、すなわち適齢期の女性が周りにいない状況から未婚率の上昇を説明する説も見受けられる。

 こうした経済問題や男女数ギャップも、当然、未婚率の上昇に影響を与えていると考えられるが、それ以上に大きいのは日本人の結婚観の変化、すなわち必ずしも結婚しなくてもよいのではないかという意識が広まって来ているからである。

 また、日本では少子化が進行している(図録1550参照)。これも費用や仕事との関係などの点で「子供を育てられない」という側面と「子供は必ずしももつ必要はない」という意識変化の側面とがある。こちらについても「育てられない」側面が強調されるが、後者の側面も実は重要である。

 未婚率上昇や少子化の進行の要因として基本となる日本人の意識変化については、基本である割には、案外、ふれられることが少ないので、この点を示すデータを紹介しよう。

 この点については、日本人の意識の変化を長期的に追っているNHKの意識調査の結果で調べられるので見てみよう。

 未婚率上昇にかかわる設問は「人は結婚するのが当たり前だ」という意見と「必ずしも結婚する必要はない」という意見のどちらに近いですかというものである。

 前者を選んだ割合は、1993年から2018年にかけて、44.6%から26.9%へと低下し、後者を選んだ割合は、50.5%から67.5%へと上昇し、前者の割合の2.5倍といまや多数派になっていることが明らかだ。

 最新2018年の男女・年齢別の結果を見ると、若い世代の8〜9割は「必ずしも結婚する必要はない」という意見であり、特に女性でその割合が高い。

 旧世代の人間には信じられないことであるが、日本人の意識として、結婚は必ずしも当然のことではなくなったのである。

 次に、少子化にかかわる設問であるが、「結婚したら、子どもをもつのが当たり前だ」という意見と「結婚しても、必ずしも子どもをもたなくてよい」という意見のどちらに近いですかというものである。

 前者を選んだ割合は、1993年から2018年にかけて、53.5%から32.8%へと低下し、後者を選んだ割合は、40.2%から60.4%へと上昇し、前者の割合の1.8倍とやはりいまや多数派になっている。ただし、結婚は当たり前かよりは両者の差は小さくなっている。

 また、いつ当たり前かそうでないかの意見が逆転したかを見ると、結婚の方は最初から逆転しており、子どもをもつ意識については、やや遅れて2003年にはじめて逆転している。

 最新2018年の男女・年齢別の結果を見ると、結婚と同じように、若い世代の8〜9割は「必ずしも必要はない」という意見であり、特に女性でその割合が高い点も同じである。

 実際の少子化は、まず結婚が当たり前でなくなり、次に、結婚しても子どもをもつのが当たり前でなくなるという両方の意識変化が重なって進行している事態だということが分かる。

(2022年4月26日収録) 


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