18歳以上の子どもがいる者に対して、その子どもとの同居や会う頻度についての回答結果をグラフにした。高齢者の状況を見るため、65歳以上に絞って集計したので、回答数がやや少ない点には注意が必要である。 密接度を同居比率で見てみると日本はブラジルに次いで高く、密接な関係が維持されていると見られる。しかし、週何回会うかということまで含めた密接度を見てみると、日本の高齢者と子どもとの密接度は必ずしも高くないことが目立っている。この点をもう少し分かりやすく見るため、密接度を3ランクに分けて、各国のランキング表を以下に掲げた。
スペイン、イタリア、ブラジルといったラテン系の諸国では、高齢者と子どもとの密接度が非常に高いことが目立っている。例えば、スペインは同居比率では、日本の37.1%をかなり下回る27.3%であるが、週数回以上、あるいは週1回以上の比率では世界1の高さである。
日本の特徴は、同居比率は高いものの、いったん別居した場合、子どもが高齢者に会いに行く頻度がひどく落ちてしまう点にある。同居比率では世界2位であるのに、週数回以上では12位、週1回以上では17位とずっと密接度は低くなる。これは、家制度の名残りで、いったん別家に嫁いだ娘や所帯を別に構えた息子が、長男と同居することが普通とされた親の家を訪れることは、長男や長男の嫁への遠慮などから控え目になってしまう習慣が尾を引いているためであろう(図録1309参照)。 成瀬巳喜男監督の映画「山の音」(1954)では、山村聡扮する一家の主人は、夫婦間の不和により嫁ぎ先から戻って来た実の娘(中北千枝子)より、こちらも夫婦間は不和なのだが、同居し面倒を見させている長男の嫁(原節子)の方を尊重し、事実上、追い出してしまう。家制度上のタテマエに乗じて、好感度の高い嫁をかわいがっている山村聡は、娘の中北千枝子に「お父さんは美人が好きなので、私に冷たい」と本音をぶつけられて困惑するのである。 毎年のように親と既婚の子どもとの同居比率は低下しており(図録2414参照)、近居を増やすなど、同居以外で密接度を高める施策を推進しないで、このまま放置すると、孤立した高齢者が増えていくのは必至と考えられる。 密接度が低い国としては、フランス、あるいはデンマークなど北欧諸国、そして英米などアングロサクソン系の国が多い。 もっとも、結婚すると親と別居し、スープの冷めない距離に住むのが理想とされた英国では、同居比率は27位と少ないが、週数回以上では23位、週1回以上では、日本を上回る15位となっており、一緒に住まないけれども近くに住んで親の面倒をみるという気風が根付いていることがうかがえる。 (2014年9月24日収録)
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