内閣府では各国の60歳以上の高齢者を対象に「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」を1980年から5年ごとに行っている。

 この調査により、生活に困っている高齢者の割合(経済的に日々の暮らしに困ることがあるかの割合)の国際比較を図録化した。「困っているかどうか」は主観的な要素も含まれる。貧困度の絶対的な評価(衣食住の最低限を確保できているかどうか)と相対的な評価(その国の平均的な生活と比べて満ち足りていないかどうか)の両方が自己評価についても生じていると考えられる。そうした点を踏まえて結果を判断する必要がある。

 日本の高齢者のうち経済的に暮らしに困る者の比率は「困っている」5.9%、「少し困っている」16.7%をあわせて22.6%であり、比較対象の国の中でスウェーデンを除くと、ドイツ、米国、フランス(2005年)、韓国(2010年)より低い。「困っていない」の比率も同じ順番である。

 図録4653では国民一般の生活困窮度の国際比較を掲げた。食料を買えなかったことがある者の比率を、ここでの比較対象国について見てみると、比率の高い順に韓国→米国→フランス→ドイツであった。米国を除くとほぼ同じ順になっている。米国については絶対的には困っていても自己責任意識から主観的には困っていないと考えている可能性がある。

 高齢者か否かという違いはあるものの異なるアンケートで同様の結果となっている点は結果の信憑性を増すものである。特に日本の貧困度が他国に比べ低い点は間違いないところであろう。

 第2の図に各国の時系列変化を掲げた。困窮高齢者比率について、韓国の高止まり、フランスの低下、米国の上昇が目立っている。ドイツは日本より困窮高齢者が少なかったのが2005年には上昇、逆転したが、最近は同一水準となっている。近年のドイツ経済の好調を反映しているものと考えられる(失業率比較の図録3080参照)。

 日本は1980年から2000年にかけて困窮高齢者は増える傾向にあったが、2005年にはその割合がかなり下がったが、それ以降、再度、上昇し、2000年のピーク水準になっている。格差が社会問題化している時期にかえって困窮高齢者は減ったという結果となっていた。若年層を犠牲にしているかどうかは別にして、高齢者に対する社会保障が機能している結果だと考えられる。

(2007年12月26日収録、2011年6月9日更新、2017年6月2日更新)


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