昆布の地域別生産量を掲げた。北海道は総合振興局・振興局の地域区分ごと、その他は県別に示した。 リン、窒素、ケイ素などの栄養塩に富んだ寒流の親潮が北海道・東北の太平洋沿岸を南下している。昆布は親潮の恵みを受けて育つ。昆布の主産地である北海道でも対馬暖流が北上する日本海側では昆布は育たない。また昆布の種類もこうした海流の影響で地域的な住み分けの状況にある。 なぜ親潮が世界有数の豊富な栄養塩を有していて豊富な生物を養っているのかについては、かつては、海洋上層で酸化分解した有機物が沈みこんで形成された深層の豊かな栄養塩の含有層が南から北への深層大循環を通じて亜寒帯海域で湧昇しこれが親潮に混じり込むからだとする説が一般的であったが、最近は、アムール川が供給する溶存鉄が流氷から溶け出した水流に混じり、オホーツク海を反時計回りに流れる海流に乗って千島列島のブッソル海峡から親潮域に移動し、これが光合成に働いて植物プランクトンの栄養塩利用を促進するからという側面がクローズアップされた(NHK2010)。 2014年の日本のコンブの総原藻生産量は10万トン(うち養殖が3.3万トン)であり、そのうち89%が北海道産である。 参考までに北海道・東北の同一地域におけるアワビ類の地域別漁獲量を示したが、暖流育ちのアワビ類はちょうどコンブ類と逆の分布パターンをもっている。アワビ分布の限界は渡島では函館の東隣の戸井までである。 昆布の種類と分布
日本海に面する宗谷には北からの冷たい流れが来ていてリシリコンブ(マコンブの類縁種)がとれる。量的に生産量が多いのは根室と釧路にまたがる地域であり、全体の約半分を占め、ナガコンブが多い。その中で、知床半島の国後島側だけで採れるラウスコンブは量的には少ないが、品質がとくに優れているので評判になっている。道南部の日高はミツイシコンブ(ヒダカコンブ)、渡島はマコンブが多く(生態的には暖流系が到達する境界である室蘭の地球岬が境)、あわせて総生産量の約40%を占めている。渡島の中でも対馬暖流が東流する津軽海峡に面した函館の立待岬以西では量的には少なくなるが暖流を好むホソメコンブが主となる。 京料理と大阪料理の味の違いは、京料理が素材を生かす「利尻昆布」を使うのに対して、大阪料理は旨味の強い「真昆布」を使うことから生じているとも言われる。 歴史的には、細目昆布→真昆布→日高昆布→長昆布へと生産量を格段に増やしながら主たる生産地を拡大していき、昆布が送られる地域でも各段階ごとに昆布利用が変遷していった様子については図録0668参照。 昆布の銘柄
天然の昆布は、約2年で採取されるまでに成長する。養殖の昆布は、種づけから約1年間で採取される「促成」と約2年間で採取する「養殖」という二つに分かれる。養殖といっても、ロープに種苗をつけて育てているだけなので、海や気候などの条件は天然のものと変わらない。養殖ものは天然とは表示できないが給餌はしていないので養殖と表示する義務はない。養殖の昆布は渡島と岩手に多い。 下表の通り、コンブ加工品はそれぞれに適したコンブ銘柄(産地)が存在し、そのうえ加工業者はコンブが生産される浜ごとの特徴を捉え、自らが求める商品に合致したコンブを仕入れて加工している。 なお、昆布の消費地域については図録7806参照。
【参考文献】 ・大石圭一「昆布の道」1987年、第一書房 ・NHKスペシャル「日本列島奇跡の大自然 第2集海豊かな命の物語」(2010年10月10日放映) (2016年4月28日収録、2020年3月27日昆布が違う大阪料理と京料理)
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