いちご(イチゴ、苺)は果樹ではないので生産統計では野菜、果物屋で売っているので流通統計では果実に分類されている(コラム参照)。果物屋で売っているので消費者も果物と考えている。いちごは生産額では野菜の中でトマトに次ぎ、きゅうりを上回る大きな売上げとなっている(図録0420参照)。 いちごの都道府県別の農業者の売上げ(産出額)をグラフにした。いちごの産地は、東は栃木が中心、西は、福岡、熊本、佐賀、長崎の諸県、そして東海の静岡、愛知が次ぐ。いちごといえば東日本では「とちおとめ」、西日本では「とよのか」だったが、甘い、大きいをキャッチフレーズに全国の産地が新ブランド戦略を展開し、「いちご品種の戦国時代」に突入している(東京新聞2006.3.13)。いまでは、東はなお「とちおとめ」が優勢だが、西は、「さがほのか」が最も多く、これに「あまおう」、「さちのか」と続いている(東京新聞2013.12.8)。 いちごの歴史をおさらいすると、江戸時代にオランダから伝わったいちごだが、大衆化したのは戦後、米国産のダナーが1960年代に登場し、埼玉での栽培がさかんとなった。当時、いちごといえば「埼玉ダナー」、酸味が強く、練乳をかける食べ方、あるいは器にいちごを入れ、牛乳と砂糖をかけ、スプーンで潰す食べ方は、古い人にはなつかしい。 1980年代は、東では栃木の「女峰」、西では福岡の国研究所開発の「とよのか」が登場、それ以降、「女峰」は「とちおとめ」に代わったが、東西2強時代が長く続いた。栃木では20年前から、生産者に売上げの一部を拠出してもらって、PR体制を強化し、首都圏でテレビCMを流してきたという。 西の「とよのか」に陰りが出始めた数年前から、西日本各県が独自品種を開発、群雄割拠の時代に入り、大消費地東京で相互に争うようになった。 佐賀県が開発した「さがほのか」は円錐形で実が締まり、「ケーキやカクテルに向く」とアピールされている。一方、福岡の「あまおう」は、「あかい、まるい、おおきい、うまい」の頭文字をとって命名されており、高価だが甘くて丸い形、贈答品向けなどで売り出している。この他、熊本、静岡、奈良などでも新品種の攻勢をかけてきている。 トップシェアの「とちおとめ」は、消費者ニーズの多様化により、単価が下落傾向にあり、10年連続単価トップの福岡の「あまおう」に後れを取っている。そこで、栃木でも「あまおう」に対抗できる高級イチゴを、という声に応えて開発されたのが「スカイベリー」であり、2015年のシーズンから本格出荷が開始された。果物専門店の新宿・高野における2015年3月のイチゴの値段では、あまおうが1粒200円なのに対して、スカイベリーは350円と大きくリードするに至っている(毎日新聞2015年3月7日夕刊)。 イチゴの国内消費は微減傾向。むしろ輸出が香港、台湾向けに増加している。 いちご栽培の歴史
(2006年4月3日収録、2012年8月1日コラム追加、2013年12月8日更新、年表追加、2015年3月7日スカイベリー記事、コラム2追加)
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