NHKの放送文化研究所では2007年に全国300地点、16歳以上の国民3,600人を対象に今の日本人が好きだと感じているものの調査を行っている(有効回答率66.5%)。

 ここでは、調味料・香辛料のうち何を日本人が好きかについてランキングをかかげ、また前回1983年調査の結果と比較した。資料はNHK放送文化研究所世論調査部「日本人の好きなもの」(2008年)である。

 調味料・香辛料には、みそ、しょうゆのような”うまみ”調味料、マヨネーズ、ごま油、ドレッシングのような油脂系調味料、また、ネギ、しょうが、わさび、こしょうといった”辛い”香辛料、ポン酢、酢、ゆずといった”酸っぱい”調味料・香辛料などがある。これ以外に、ごま、塩、砂糖、みりん、焼き肉のたれ、青のりが選択肢にあがっている。しょうゆは薄口ようしゅと濃口しょうゆに分けられている。

 みそ、しょうゆなどの伝統的な”うまみ”調味料の人気が、やはり、高いが、ネギ、しょうが、わさびといった”辛い”香辛料もこれに次いで人気がある。マヨネーズやポン酢といった新しい調味料もこれらと並んで人気がある。

 1983年調査と比較してもそれほど大きな変化はないようである。

 男女、年齢別に見ると、若年層より中高年、男性より女性の方が調味料・香辛料が好きである点が目立っている。すなわち、10位までの各項目の回答率が全体的に、若者層(16〜29歳)より中年層(30〜59歳)、中年層より高年層(60歳以上)の方が高いという傾向が認められる。


 ネギを例にとってみると、男若年、女若年、男中年、女中年、男高年、女高年の順に、43%、46%、58%、62%、69%、75%と順序の狂いがなく愛好度が上昇しているのが不思議なぐらいである。野菜としてのネギは男性の方が好む傾向にあるので(図録0334)、少し意外な結果である。

 中高年ほど舌が鈍感になるので、辛いものや苦いものを一層好む傾向があるといわれる。子どもはゴーヤやしそなど苦いものが嫌いであるが(図録0330)、大人になると、かえって好まれるようになるのもそのためだと理解されている。ネギの愛好度を見るとこの点が成り立っているようだ。

 ところが、ネギだけでなく、みそをとっても、ネギと同じ順番で愛好度が上がっていく。特に高年層では男女ともにトップの品目となっている。

 マヨネーズは高年層では男女とも10位以内に登場せず、若年層と中年層が好んでいる点が目立っているが、愛好度は高年層を除いてネギやみそと同じ順番で上がっていく(若い層ほど愛好度が高い訳ではない点はマヨラーのナゾともいうべき現象)。みそとマヨネーズは新旧の”うまみ”調味料として似たところがあるように見える。若年層でマヨネーズが男で1位、女で2位と上位にあるにはそれ以外の「うまいもの」、「からいもの」ものへの愛好度がより低いからに過ぎないともいえる。

 ネギの場合は舌の鈍さで好き嫌いが説明できるが、みそやマヨネーズの愛好度の年齢・男女傾斜はどう説明したらよいのだろう。ある程度、食べなれると癖になる(依存効果、習慣性が生じる)からなのだろうか。歳を取ると食べた回数が増えるし、女性の方が調理で味見する回数が多いからだとすると合点が行くのだが。

 なお、純粋に若年層型の調味料は、マヨネーズではなく焼き肉のたれである。なぜなら、若年層では男女とも登場し、特に男性の場合は2位であるのに、若年層以外では10位までに全く登場しないからである。

 愛好度に男女差のある調味料・香辛料もある。

 わさびとにんにくは男はいずれの年代でも10位以内に登場し、特に中年層ではわさびが1位であるのに、女性の方には全く登場しない。

 逆に、しそは女性は上位ではないがいずれの年代にも10位までに登場するのに対して、男性はいずれの年代にも登場しない。

 ごまも女性の中高年には非常に好まれているが(中年層ではトップ人気)、男性の場合は登場しても低い順位である。

 わさび、にんにくは男性型香辛料、しそ、ごまは女性型香辛料といえよう。

(1983年調査の男女年齢別結果)

 前回1983年調査では、細かい年齢別の集計が行われているので下に主な調味料・香辛料について掲げた。みそは前回は選択肢になかったので掲げていない。

 年齢別には、ほぼ、右上がり、すなわち年齢を重ねると好きになる傾向が認められる。

 わさびとにんにくについては、50代以上になるとむしろ愛好度が頭打ちあるいは低下する。刺激が強すぎるからであろうか。

 右上がりでないのは、マヨネーズとドレッシングである。新しく登場した調味料であり、刺激性というより油脂系うまみが特徴であることもあって、若い層の方が好んでいる傾向が見られる。2007年調査で若年層より中年層の方がマヨネーズが好きという結果となったのは、1983年の段階で目新しいこともあってマヨラーになった若者が中年になってもなお大好きであるのに対して、その後の若者にとっては当たり前の食品となり取り立てて好きということもなくなったからであろう。

 男女差については、2007年調査と同じように、わさび、にんにくは男性型香辛料である点が40代以下で目立っている。

 これに対して、その他の調味料・香辛料では、おおむね、歳を重ねると女性型である点が顕著となってくる。2007年調査で女性型であることが顕著だったしそ、すりごまだけでなく、しょうゆ、しょうが、またマヨネーズ、ドレッシングでもそうした傾向が認められる。


(2018年11月28日収録、11月30日2007年調査の20〜29歳を16〜29歳に修正、1983年調査の男女年齢別結果)


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