世界の主な国・地域のシーフード(食用水産物)の1人当たり年間消費量について、FAO(国連食糧農業機関)の統計によって1961年以降最多となった年の値をグラフにした。原語表示は供給量であるが、これは、消費量そのものを調査した結果でなく、食用水産物(海洋魚介類)について、生産量から輸出を引き輸入を足して在庫を勘案して算出した消費量だからである(いわゆる食料需給表ベース)。
 
 対象国・地域は、世界、及び消費量の多い順に、G20諸国は、日本、韓国、フランス、中国、インドネシア、オーストラリア、イタリア、カナダ、米国、ロシア、英国、ドイツ、メキシコ、アルゼンチン、南アフリカ、ブラジル、サウジアラビア、トルコ、インドの19カ国、それ以外は、モルディブ、アイスランド、ポルトガル、香港、マレーシア、ノルウェー、スペイン、台湾、フィリピン、フィンランド、ベトナム、タイ、スウェーデン、ニュージーランド、デンマーク、ギリシャ、アイルランド、イスラエル、オランダ、チリ、スイス、ポーランド、チェコ、ハンガリーの24カ国である。世界・主要国・地域の消費水準の推移については図録0270参照。

 G20諸国の中では、日本が72.6sと世界1位であり、魚食国としての特徴を示している。

 各国の消費レベルは、立地や文化により、様々であり、必ずしも経済発展度とはリンクしていない。

 小国では、インド洋に浮かぶ島国モルディブの187.3sが圧倒的一位であり、ヨーロッパのアイスランドも94.1sと日本を上回っている。

 日本に次いで消費量が多い国としては、ポルトガル、香港が70kg台、マレーシアが60kg台、韓国、ノルウェーが50s台と目立っている。魚介料理で有名なスペイン、イタリアは、前者は40sとまあ多いが、イタリアは25.9kgとそれほどでないのが意外である。

 米国、英国も20キロ台と少なく、ドイツ、チェコなどは世界平均を下回っている。大国の中ではブラジル、インドは10s前後かそれ以下とかなり少ない。

【コラム】モルディブ

 モルディブは1965年に英国から独立した1200余りの島々からなるインドの南西約600qに位置する国である。人口約25万人、近海に豊富な漁業資源があり、生活の糧は漁業に依存し、漁船は日本の援助により動力化された1800隻超。総漁獲高(1994年)10万トンのうち、約7万トンがカツオ。日本のなまり節や荒節にあたる独自の鰹節製造を行っていることで知られる。これは、モルディブ・フィッシュと呼ばれ、使いやすいよう細長く砕いたチップ状で流通している(右に写真)。魚類の半分以上の6万トンは輸出され、スリランカが輸出先の8割を占めている。モルディブやスリランカでは鰹節はカレーやスープで食される。立地上の特性の他、モルディブはイスラム教徒が多く、豚肉を食さず、牛も手続きが大変なため、魚の消費がなおさら多くなっている。

(若林良和「カツオの産業と文化」成山堂書店、2004年による)

【コラム】世界と日本の海藻利用


 日本人にとっては、昆布、わかめ、のりといった海藻類は身近な食べものであるが、世界には、東アジア、東南アジアのように海藻をよく食べる地域と欧米諸国のようにあまり食べない地域とがある(上図参照、記事も図の資料から)。

 海藻は、近年は食物繊維や特定の栄養素を含む優れた機能性食品として、また、日本食ブームで世界的に注目されているが、まだ嗜好品、珍味にすぎない地域も多い。また、欧米では「食べるものが不足した時の非常時の食べもの。ふだんは食べない」といった否定的な意見が根強い。

 ただし、海藻をあまり食べないヨーロッパでもケルト民族が住むアイルランドなどでは古くから海苔やダルスと呼ばれる海藻が食べられているという。


江戸時代には現代でもお馴染みの海藻料理が登場

 東京新聞(2022.3.27)によれば「江戸時代後期には相撲番付の形式にならってさまざまな物事をランクづけした「見立番付」が次々につくられた。天保期(1830〜44)には庶民の人気の倹約おかずを一覧にした「日々徳用倹約料理角力(すもう)取組」が話題となった」。

 上にはその番付を掲げた。「きんぴらごぼう」、「たたみいわし」、「ほうれん草ひたし」といった家庭や飲み屋などで現代の日本人にとってお馴染みの和風おかず(総菜)がすでにオンパレードであるのに驚かされる。番付の現物や掲載料理の写真については、こちらのサイトを参照されたい。

 その中でも「ひじき白あえ」、「筍あらめ」といった海藻料理が多く登場している。蝦夷地(北海道)特産の昆布が北前船経由で寄港地だけでなく、大阪、江戸でも各種料理に取り入れられていたことがうかがわれる(昆布の歴史的な全国普及に関しては図録0668参照)。

(2006年1月21日収録、2010年7月24日更新、2011年1月6日モルディブ・フィッシュ写真追加、2016年6月1日最多年表示に変更、更新、2022年2月19日コラム世界の海藻利用、3月27日コラムに「江戸の倹約おかず番付」を追加)


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