世界のシーフード(食用水産物)の1人当たり年間消費量について、FAO(国連食糧農業機関)の統計によって1960年代から最近までの動きをグラフにした。原語表示は供給量であるが、これは、消費量そのものを調査した結果でなく、食用水産物(海洋魚介類)について、生産量から輸出を引き輸入を足して在庫を勘案して算出した消費量だからである(いわゆる食料需給表ベース)。

 対象は、世界、日本、米国、欧州(主要4カ国平均)、中国、韓国である。その他諸国を含めた世界各国の消費水準比較(最多年と最近年)は図録0260参照。また、1人当たりでなく、トータルの世界と各地域の消費量については、図録0240参照。

 島国(海洋国)日本は他地域に比べ、食用水産物の消費レベルが高い魚食国としての特徴がある。最近は日本の消費量は減少し40キログラム台まで落ちてきており、2006年以降は、消費量が増加してきた韓国に追い抜かれた。それでも日本の年間消費量の水準は、欧米の2倍となっている。韓国と平行して中国の消費増も著しい。

 世界的には1960年代には10s以下だった消費が、徐々に上昇してきており、2021年には20.16sとなっている。ただし、2010年代後半には横ばい傾向となっている。

 各国、各地域で消費が伸びた時期は異なる。

 日本は、1970年代前半までの高度成長期には、蛋白源として魚介類消費が大きく伸びたが、その後は、大きく見れば、食生活の洋風化にともなって、横ばいに転じ、最近は資源量の制約や国際市場での買い負けなどから消費量は減少している。

 韓国は、1970年代に急激に消費が増え、その後も徐々に増加していたが、更に、21世紀に入って、一段と消費が伸びていたが、2000年代後半から横ばいか低迷に転じている。

 米国は、1980年代まで消費が拡大していたが、1990年代は横ばい、2000年代に入って再度拡大となったが、2005年ごろを境に横ばいか低迷に転じている。

 欧州は、もともと、米国よりは1人当たり消費量が多かったが、1980年代後半から需要が伸び始めている。BSE(狂牛病)が英国ではじめて見つかったのは1986年であり、その影響があると考えられる。下に掲げたコラムの通り、このため、フランスで肉にあう赤ワインの消費が少なくなり、魚に合う白ワインやロゼワインが伸びているといった影響も出ているといわれる。

 しかし、欧米は2010年ごろからむしろ減少傾向となっている。

 中国は、経済成長と所得向上に伴って、1990年代に入って消費が急増し、1995年に欧米レベルにまで達し、その後欧米を上回って増加傾向にある点が目立っている。中国の場合、人口が多いため、世界全体の水産物消費への影響は極めて大きい。ただし、2010年代後半にかけて横ばいに転じている。

 毎日新聞20060117は「「魚食べると心臓病予防」実証」と報じた。これは、厚生労働省の4万人調査で、魚をよく食べる人は狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患にかかるリスクが最大で約4割下がることが分かったというものである。毎日焼きマイワシ0.5匹食べる人の発症率を1とすると3.6匹食べる人では、心疾患全体で0.58、心筋梗塞で0.35まで発症率が下がるというのである。こうした研究が明らかになる毎に、世界の食用水産物の消費は増加し、日本でも魚食回帰の傾向が現れると考えられる。


 東京新聞の「ワイン製法緩和猛反発」という記事(2009.4.15)によれば、フランスでは、赤ワインの消費比率が下がり、ロゼワインや白ワインの比率が上昇しているといわれる。

 「肉中心の食事から魚や野菜も取り入れた軽い食事に好みが変化しているのと、ロゼの価格の安さが原因とみられる。日本のワインメーカーによると、日本ではロゼの消費割合は8%以下とみられる。」

 プロバンス地方産が中心のロゼの伝統的な製法ではフルーティな香りを保つため機械収穫でなくブドウの房を傷つけない手収穫の方法が取られるため出荷価格としては赤や白より一般的には高い。ところが、オーストリアや南アフリカから赤と白の混合ロゼが輸入されており、こちらは価格が安く、ロゼの価格に影響を与えているといわれる。このため、輸入品に対抗するため混合ロゼを域内で禁じていたEU規制を緩和する方針が打ち出され、伝統産地の生産者らは反発を強めている。フランスの消費者は世論調査によると87%が規制緩和に反対であり、EUの欧州委員会でも改めて調整を進めているといわれる。

(2006年1月21日収録、2009年4月16日ワイン消費のコラム追加、2010年7月24日更新、2015年9月25日更新、2024年1月7日更新)


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