ギャラップ社が2023年2月に実施した調査結果によると米国人は、イラン、北朝鮮の核開発よりサイバーテロを今後の最大の脅威として恐れていることが分かった。

 図録には今後深刻になる可能性のある脅威(critical threat)として挙げられた各項目への回答率を高い順にグラフにした。

 1位は、「社会に分断と不安を招くようなサイバーテロ」(Cyberterrorism, the use of computers to cause disruption or fear in society)であり、84%の米国人が深刻な脅威(critical threat)だと回答している。SNS(ソーシャルメディア)が社会の分断を招いている点に関する米国人の大きな懸念については図録6258参照。

 これは、2位の「イランによる核開発の脅威」や3位の「北朝鮮による核開発の脅威」をかなり上回っている。以下、「国際テロリズム」、「中国の軍事力」、「中国の経済力」、「ロシアとウクライナの紛争」、「地球温暖化(気候変動)」、「ロシアの軍事力」、「中国と台湾の紛争」、「米国に流入する大量の不法移民」といった項目が続いている。

 調査期日がロシアの対ウクライナ軍事侵攻がはじまった2月24日以前である点を考慮する必要がある。ロシア関連の脅威については現時点から見れば過小評価であろう。

 米国の世論調査では定番の支持政党別の集計結果を図に併載したが、「サイバーテロ」については、将来へ向けての深刻な脅威であるという点で意見の一致を見ている一方で、「地球温暖化(気候変動)」と「米国に流入する大量の不法移民」に対する脅威意識が支持政党によって正反対であるのが目立っている。

 共和党支持層では、1位が「イランの核兵器開発」、2位が「サイバーテロ」、3位が「米国に流入する大量の不法移民」であり、「地球温暖化」は最下位であるのに対して、民主党支持層では、1位が「サイバーテロ」、2位が「地球温暖化」、3位が「イランの核兵器開発」であり、「米国に流入する大量の不法移民」は最下位となっている。両者では脅威の優先順位が大きく異なっているのである。

 これ自体が米国における政治的分断をあらわしている結果だといえるが、米国民は、そうした分断状況をサーバーテロであおられることはもっと脅威だとも考えており、出口が見つけにくい困惑した立場に置かれているようだ。

(2023年3月29日収録)


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