東京新聞(2010年9月20日)は「幹部自衛官320人天下り 武器調達上位20位に 随意契約、額と人数比例」という記事を一面トップで報じた。東京新聞はさきに防衛省生え抜きの事務次官が防衛省共済組合と取引のある保険会社や銀行に天下っていることも問題視しており(同年9月1日など)、一連の取材活動の成果だと思われる(他の全国紙はニュース価値を認めないためと見えているが報道の追従はないようだ)。

 ここでは、報じられた幹部自衛官(将官や上級の一佐など)の防衛関連産業への天下り数と契約額(下表)から相関図を描いてみた。

 確かに全体としては比例関係が成立しているようである(R2値は0.6855)。同紙が報じるように「天下り数と支払額はほぼ比例しており、「人とカネ」を通じた防衛省と防衛産業の密接な関係が裏付けられた。」といってもよいようにも思う。

 随意契約の場合、密接な関係が生まれる傾向にある。「武器は生産できる会社が限られているため、随意契約が多いのが特徴だ。例えば、戦闘機と戦車は三菱重工業しか造れず、潜水艦は同社と川ア造船(川ア重工業の子会社)にしか建造能力がない。」

 ただし、上位4社(三菱重工業、三菱電機、川崎重工業、NEC)を除く16社の相関では、相関度はほとんどない(R2値は0.099)。これは毎年の変動があるためで契約高の10年累積で相関を見れば、相関度はもっと高いのかも知れない。あるいは、契約高500億円以下の防衛産業では、天下り数と契約額はそもそも比例していないのかも知れない。東京新聞は比例しない例として燃料供給社をあげている。随意契約ではなく「競争入札を通じて燃料を納めている中川物産、新日本石油(現JX日鉱日石エネルギー)、コスモ石油に天下りは一人もいない。」

 図からはNECが契約額の割に天下り数が多いようにみえる。こうした外れ値について、分かりやすい説明があれば比例関係の説得力は増すのであるが。

ニュース用語「防衛産業の再就職」:東京新聞(2010年9月20日)

局長や将官クラスの再就職は、内々に防衛省があっせんしてきた。他省庁と比べ独立行政邦人や財団法人が少ないせいか、取引のある防衛産業に行く人が多い。あっせんは昨年10月15日の防衛相通達で禁止された。50代半ばで退官する一般自衛官には「援護」と呼ばれる就職あっせんが認められている。

 一般的に自衛官の退職後の就職先が限られている点については図録5221参照。それが良し悪しは別にして自衛官と防衛産業とのつながりを強めている点は否めないと考えられる。

防衛省からの顧問・嘱託等の採用数
  2009年までの
10年間の人数
2009年度
契約高(億円)
三菱重工業 54 2,629
三菱電機 40 1,827
川崎重工業 25 1,043
NEC 36 722
富士通 18 495
小松製作所 15 343
三井造船 8 297
日立製作所 22 197
東芝 27 168
三菱商事 5 164
中川物産 0 150
日本製鋼所 11 147
新日本石油 0 146
IHI 23 144
コスモ石油 0 140
ダイキン工業 7 134
いすゞ自動車 2 123
沖電気工業 3 119
IHIエアロスペース 8 119
富士重工業 16 105
合計 320 9,212

(2010年9月21日収録)


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