日本の自衛隊を海外の軍隊と比較して目立っているのは年齢構成の高さである。図録には、防衛省の「防衛力の人的側面についての抜本的改革報告書」から、陸上自衛隊と米国陸軍・英国陸軍の尉官以上の幹部年齢ピラミッドの比較図をかかげた。

 まず驚くのは、米英では20歳代が最も人数が多いのに対して、日本は50歳代の人数が最も多い点である。

 軍隊は少数の経験を積んだ位の高い将校が大勢いる位の低い青年将校を従え、一般の兵卒を指揮して事に当たるピラミッド型構造が適していると素人目にも思われるが、日本の場合は、高レベル将校は確かに少ないが、長く自衛隊にいる現場の先任将校が沢山いて恐らく大きな力を振るっているのである。これでは風通しが悪く、また軍事費の多くが人件費に消え装備費には多くを割くことができない大変難しい状況になっているのではないかと想像される(兵力削減問題については図録5220参照)。

 報告書ではこう述べている。「米英軍においては、在職期間を制限した退職制度や早期に支給される年金の存在等により、早期に退職するものが相当数存在すると考えられるのに対し、自衛隊においてはそのような制度等はなく、基本的に定年まで勤務する傾向にある...自衛隊のような実力組織においては組織をより精強な状態に維持することが必要であることや、近年、国際平和協力活動などで実際に活動する機会が増加していることを踏まえれば、現状の年齢構成は望ましくない。...自衛隊の年齢構成是正等の観点から、40代での退職のための新たな中途退職制度について検討する必要がある。」

 従来は「実際に活動する機会」が少なかったのでこうした逆ピラミッドが成立してしまったかのような表現は本音なのかも知れない。中途退職制度だけの問題ではなく、退職自衛官の職場が欧米のように民間に多く開かれておらず、それは自衛官自体の能力の問題と退職自衛官を喜んで受け入れる民間企業や学校等が少ないという社会環境の問題が背景にあると考えられる。

 幹部以外の曹や士でも若年層の割合が減っている点を以下のグラフに示した。採用は幹部候補生、曹候補生、自衛官候補生(任期制自衛官対象)に分けて行われているが、士が特に減っているのは募集応募者の減少による自衛官候補生の採用減が響いているようだ。防衛省は2018年10月から幹部候補生以外の自衛官の採用年齢の上限を26歳から32歳に引き上げているが、さらに、階級によって53〜60歳となっている定年年齢についても1996年以来の引き上げを検討しているという(毎日新聞2018.11.18)。ある自衛隊幹部は「将来、少ない人数でいかに部隊を回すか。頭の体操はしている」と語ったという(同)。


(2008年12月21日収録、2018年11月18日自衛官の年齢構成の変化図)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 行政・政治
テーマ  
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)