報道がネガティブで短期的なニュースを取り上げがちなことから、集団不安心理の影響もあって、データ上は改善していても、人々は状況が悪化していると考えがちである。これがいわゆるネガティビティ・バイアス(Negative Bias)と呼ばれるものである(注)

(注)人間がポジティブな情報よりもネガティブな情報(不快、苦痛、恐怖など)に注意を向けやすく、記憶に残りやすく、また判断に強く影響を受けやすい心理的な偏りである。これは、危険やリスクを避けて生き残るために進化の過程で身につけた適応的な性質とされる。

 こうしたバイアスがネット情報やSNSで増幅され、いわゆるフェイク・ニュースの温床となっていると考えられる。

 世界的な調査会社であるイプソス社の「誤解、偏見、陰謀論による危険性」(Perils of perception, prejudice, and conspiracy theories)という報告書では、独自の調査結果(2023年11月実施)と実際のデータとの対比で、そうしたバイアスの事例を@富の格差、A移民比率、Bイスラム教徒比率について紹介している。ここではこの3つの事例をグラフで示した。

 いずれの事例においても、各国で、実際の状況より意識調査の結果でネガティブ面が過大に認識されていることが明らかである。例えば、米国におけるイスラム教徒比率は1%にすぎないのに、意識調査結果では22%もいると見られている(世界各国のイスラム教徒比率は図録9034参照)。

 また、殺人事件の犠牲者は実際は各国で減少傾向であるのに(米国を除き)、下図に示したように、意識上は、むしろ犠牲者は増加していると認識されている。図録2776で示したように日本の他殺による犠牲者は2000年から7割以上の減であるが、この図では意識上は何と4割以上の日本人が犠牲者が増えていると認識している。これこそ、データ上は状況が改善されているにもかかわらず、むしろ状況が悪化していると見るネガティビティ・バイアスの典型事例であろう。


(2026年2月14日収録)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 地域(海外)
テーマ
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)