パリに本社を構える世界的なマーケティング・リサーチ会社であるイプソス社は2024〜25年に世界30カ国、2.3万人を対象とした女性問題に関するインターネット調査を実施し、その結果を2025年の国際女性デー(3月8日、50周年)にあわせて公表した。

 この調査の中では、各国で男性と女性の間の緊張関係が高まっているかをきくとともに、男性と女性の間だけでなく、貧富や民族間、地域間など、その他の階層間の緊張関係の高まりと比較するため、それぞれについての設問を設けている。ここでは、その結果を図録化した。

 30か国平均で最も緊張が高まっているとされたのは「富裕層と貧困層」の間であり、平均して73%が「非常に」あるいは「ある程度」緊張が高まっていると答えている。

 「富裕層と貧困層」の間に次いで、緊張がたかっているとされたのは「移民と自国生まれ」であり、移民問題が世界的な課題となっているということがうかがわれる。

 これに次ぐのは「保守とリベラル」(もともとの設問文では「社会的にリベラルで進歩的な考えを持つ人と、伝統的な価値観に重きを置く人」)の間のイデオロギー対立である。

 4番目の緊張は「さまざまな民族」の間のものであり、これは2番目の移民問題と重なる部分が大きい。

 以上のような国内の緊張と比較すると「高齢者層と若年層」、「男性と女性」、「都市部と地方」はそれほど大きな対立ではないようだ。

 30か国平均とともに、日本と米国、西欧主要国を折れ線グラフで示しているが、日本の場合は、国内の階層間の緊張の高まりは、概して低い点が特徴となっている。特に「移民と自国生まれ」と「保守とリベラル」は世界最低となっている。一方、世界一の高齢化を反映してか、「高齢層と若年層」の緊張の高まりは、世界レベルに近いものがある。高齢者と若い年齢層との意識ギャップ、あるいは高齢化対策と少子化対策のいずれを取るかなどの課題によるものだろう。

 米国の国内階層間の緊張の高まりは、概して、大きい点に特徴がある。

 西欧主要国に関しては、「移民と自国生まれ」及び「さまざまな民族」での緊張の高まりが他に比べ目立って高く、移民問題の深刻さをうかがわせている。一方、「高齢者層と若年層」、「男性と女性」、「都市部と地方」の間の緊張は世界と比べ概して低い。

 それぞれの階層間の緊張の高まりの各国別の特徴を整理すると以下の通り(図録または以下の見出しクリック・タップで開けるランキングpdf図を参照)。
富裕層と貧困層
上位3か国はハンガリー、タイ、韓国、下位3か国はポーランド、日本、インド。先進国、途上国を問わず、またアジア、ヨーロッパ、南北アメリカのそれぞれで高い国もあればそうでもない国もある。G7の中ではイタリア、米国で緊張が高まっている。
移民と自国生まれ
上位3か国は南アフリカ、オランダ、イタリア、下位3か国は日本、アルゼンチン、インドネシア。移民が多い欧米先進国で概して移民問題が深刻であるのに対してアジアではそれほど緊張は高まっていない。中南米ではチリ、コロンビアは高く、ブラジル、アルゼンチンは低い。
保守とリベラル
上位3か国は韓国、米国、コロンビア、下位3か国は日本、インド、マレーシア。同じ東アジアの韓国と日本が最高と最低と対比が目立っている。欧米先進国の中では米国、スペインの対立が激しく、ドイツ、スウェーデンの対立はゆるい。
さまざまな民族
移民と自国生まれと同様の傾向。
高齢層と若年層
上位3か国は韓国、タイ、ハンガリー、下位3か国はスウェーデン、オランダ、スペイン。途上国で概して高く、欧米先進国で大して低い緊張度。G7では米国、イタリア、ドイツ、日本、英国、カナダ、フランスの順。
男性と女性
上位3か国は韓国、南アフリカ、タイ、下位3か国はポーランド、オランダ、日本。途上国で概して高く、主要先進国で大して低い傾向(米国、イタリアはやや例外的に高い)。
都市部と地方
上位3か国はタイ、ペルー、韓国、下位3か国はポーランド、イタリア、日本。途上国で概して高く、先進国で大して低い傾向

(2025年3月9日収録)


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