ピューリサーチセンターでは、2018年春に実施した国際調査で「家族の絆が強まっているか、弱まっているか」について各国民の意識を調べている。図には、この調査の結果を同時に設けられた「その変化が良い方向か、悪い方向か」という問の結果とともに示した。

 宗教の役割の変化についての同様の設問の結果や家族の絆の変化との関係については図録9540参照。

 調査対象となった27か国のうち、家族の絆が強まったと回答した者が弱まったと回答した者より多く、両者の差がプラスだったのは、フィリピン、インドネシアの2か国だけであり、残りの25か国ではマイナスだった。世界的に家族の絆が弱まったと感じられていることが分かる。

 東南アジアの特徴としてもともとは家族の絆がそれほど強くなかったフィリピンやインドネシアでは、近代化の中で家族の役割が再定義され機能強化が進んでいるため、家族の絆が強まっていると感じられているのではないだろうか。日本史における中世から近世にかけての家の形成や明治以降の近代家族の形成のような変化が先進国の法律制度などの影響もあって生じているのではなかろうか。

 マイナス幅がもっとも大きかったのは韓国の-75%ポイントであり、チュニジア、ポーランド、イタリアがこれに次ぎ、日本はこれら諸国に次ぐ-54%ポイントだった。儒教国、カトリック国など、従来、家族の絆が強いという自己認識があった国ほどマイナス幅が大きくなっていると考えられる。

 こうした家族の絆の変化とその変化の評価との相関を見てみると、正の相関が認められる。すなわち家族の絆は大切なものと考えられているので、それが強まると良い方向、弱まると悪い方向と評価する点では各国共通なのである。

 相関の傾向を示す一次回帰線より下に位置する国は、家族の絆をより重視している国といえよう。代表的なのは米国であり、家族の絆の弱化を大いに嘆いている。米国以外では、ブラジル、メキシコといったラテンアメリカのカトリック国やチュニジア、ナイジェリアといったイスラム国が一次回帰線より下に位置している。

 反対に、家族に絆が弱まっている国の中でも、ヨーロッパ諸国や西欧的価値観の影響が強い日本や韓国では、それほどそれを嘆いていない。米国と欧州諸国では家族観に明確な違いがあるようである。米国の特異性は、プロテスタントかカトリックかという違いではなく、やはり、開拓時代において家族の役割が大きかったという歴史的な影響によるものであろう。

 調査対象国は27か国、すなわち米国、カナダ、フランス、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデン、英国、ロシア、オーストラリア、インド、インドネシア、日本、フィリピン、韓国、イスラエル、チュニジア、ケニア、ナイジェリア、南アフリカ、アルゼンチン、ブラジル、メキシコである。

(2019年8月22日収録)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 地域(海外)
テーマ 高齢者と家族
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)