ここでは各国における人生観、具体的には「人生は自由になるか」についての回答結果を掲げた。 2010年期以降の新しい結果は図録9479参照。 回答は「全く自由にならない」を1とし、「全く自由になる」を10とし、1から10の間のいずれかを選択してもらう形となっている。図には各選択肢の回答率を示すとともに、国名のところに平均点(加重平均値)を掲げた。 調査結果には各国のお国柄があらわれているとともに似たような回答パターンの国グループがある点に気づかされて興味深い。 日本はかなり特異な回答パターンとなっている。すなわち日本ほど中間の選択肢に回答が集中している国はない。1〜10のうちの6が26.2%と最も多く、7と5がこれに続いている。「10全く自由になる」と回答する自信にあふれた者がどの国でもかなりいるのに日本の場合は2.9%と非常に少ない。平均点では図の13カ国中ロシア、トルコに次ぐ下から3番目の6.0である。 人生は自由であるとも自由でないともいえないとする日本人の態度は、こうした各国比較の中では、むしろ特異なパターンとして目立っている(宗教観に関する図録9520参照)。 メキシコは10と回答する者が最も多く40.6%にのぼっている点で目立っている。図には掲げていないがラテンアメリカの多くの国の同様のパターンを示している。プエルトリコ、ベネズエラでは10と回答した者が、それぞれ、41.5%、40.3%となっている。 物質的な豊かさと人生観とはリンクしているわけではないことは、平均点の最も高いメキシコと最も低いトルコ、ロシアがいずれも経済的には厳しい状況にあることからもうかがえる。トルコは「全く自由にならない」という回答が23.3%と最も多い点で特徴的である。悲観的な国民なのであろうか。しかしトルコは「全く自由になる」という回答も18.9%とかなりの比率であるので、正反対の人生観が混在している点に特徴があると言った方がよいのかも知れない。 韓国と中国は政治体制は異なるがこの質問に対する回答パターンは非常に似ている。メキシコほど極端ではないが「全く自由になる」という回答が最も多く9は少なく、8から5にかけてだんだんと減っていくパターンである。儒教国としての共通性があるのだろうか。また同じ東アジアにありながら日本とは全く異なるパターンである点も興味深い。仏教思想の影響度の違いとも考えられるがいかがなものであろうか。 スウェーデン、英国、イタリア、ドイツはヨーロッパ型というべき似たパターンを示している。すなわち8が最も多く、7以下の回答になだらかに落ちていき、9〜10は比較的少ないというパターンである。ただイタリアは8のピークが低く7以下の回答率が相対的に高くなっている点で若干異なる。このヨーロッパ型は、社会に生きている限り人生が「全く自由になる」などということはあり得ないが、それでもかなりの程度思うようにならなければ生きていてもしょうがないと考えるバランスのとれた見方ともいえる。 このヨーロッパ型の変形として米国をとらえることができる。すなわちヨーロッパ型であるが「全く自由になる」という自信家がヨーロッパよりずっと多いというパターンである。このため平均点では8.0とメキシコに次ぐ高い値となっている。 オランダもヨーロッパ型の変形であり、7〜8に回答が集中している。5〜7に回答が集中している日本をやや右にシフトさせた日本類似のパターンともいえる。欧米の中でのオランダの特異性を示しているともいえよう。 ヨーロッパ型と似ているが、どちらかというと「人生忍の一字」という考え方をとる者が多いパターンとしてフランスとロシアがよく似たパターンを示している。すなわち、5が2割以上とピークの回答率となっており、次ぎに6〜8が高いというパターンである。ロシアは困窮世帯も多いことから「自由にならない」方の回答がフランスよりは多い。中国と韓国と同様に国家としての歴史経緯は異なるものの人生観においては似たパターンとなっており、両国間で帝政ロシア時代以降文化交流が深かった歴史を想起せざるを得ない。 以下に最多の選択肢ごとに図には掲げていない国を含め回答のあった59カ国の国名を掲げたので、以上の記述を参考にお国柄を判断されたい。例えば、日本とインドが同じ選択肢を最も多く選んでいる点が興味深い。
(2008年8月6日収録)
[ 本図録と関連するコンテンツ ] |
|