スイス・ジュネーブの高等国際問題研究所は拳銃や自動小銃など小型武器の現状についての白書を毎年まとめている。ここでは2007年の報告書から拳銃など小火器の各国別の保有数を図録とした。
世界の小火器は全部で8億7500万丁あると推計されるが、そのうち74%に当たる6億5千万丁は民間が保有している。
世界の小火器(firearm)
|
小火器数
(百万丁) |
比率
(%) |
計 |
875 |
100.0 |
司法・警察当局 |
26 |
3.0 |
軍 |
200 |
22.9 |
民間 |
650 |
74.3 |
(注)高位推計と低位推計の平均である。軍保有については旧式の非自動武器を含まず。民間保有は手工業製品を含まず。 |
(資料)Annexe 3; Small Arms Survey (2006, pp. 37, 56) |
各国別に見ると米国の民間保有数が2億7千万丁と圧倒的に多く、人口比でも10人に9丁という高い保有比率になっている。まことに米国の銃社会ぶりを象徴するデータといえよう。
小火器保有数総数で米国に次いで多いのは、インド、中国、ドイツ、フランスなどである。
人口当たりの保有数では、米国に次いで、イエメン、フィンランド、スイス、イラクなどが高い保有率となっている。
下表のように米国で銃の乱射事件がしばしば起こるのもこうした背景によるものである。
米国で起きた主な銃撃事件
1999年
4月20日 |
コロラド州の高校で男子生徒2人が銃を乱射、生徒ら13人死亡(コロンバイン高校乱射事件) |
2007年
4月16日 |
バージニア州のバージニア工科大学で男子学生が乱射、学生ら32人を殺害 |
2009年
11月5日 |
テキサス州のフォートフッド陸軍基地で陸軍少佐の精神科医師が乱射、13人死亡 |
2012年
7月20日 |
コロラド州デンバー郊外の映画館で男が乱射、12人死亡 |
2012年
12月14日 |
コネチカット州ニュータウンの小学校で男が乱射、子どもら26人が死亡 |
2015年
6月17日 |
サウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で白人の男が乱射、9人死亡 |
2015年
10月1日 |
オレゴン州ローズバーグで男が乱射、9人死亡 |
2015年
12月2日 |
カリフォルニア州の福祉施設で乱射事件。14人死亡、警察が容疑者男女を射殺 |
2016年
6月12日 |
フロリダ州の同性愛者向けナイトクラブでアフガニスタン移民の子であるイスラム教徒の男が乱射、49人死亡 |
2017年
10月1日 |
ネバダ州ラスベガスのホテル32階からコンサート会場に向けた銃乱射で、米国史上最多の死者58人の犠牲者、負傷者は527人(地元捜査当局2日発表、死者数は後日の訂正後) |
2017年
11月5日 |
テキサス州で日曜礼拝中だった「ファースト・バプテスト教会」で黒ずくめの格好をした若い男が乱射、26人死亡 |
2018年
2月14日 |
フロリダ州パークランドの高校で19歳の男が乱射、17人死亡。高校の生徒たち自身が銃規制の強化を訴えるキャンペーン |
2018年
5月18日 |
テキサス州サンタフェの高校でこの高校に通う男子生徒(17)が銃乱。生徒ら10人が死亡、10人が負傷 |
2018年
10月27日 |
ペンシルベニア州ピッツバーグのユダヤ教会堂(シナゴーグ)で反ユダヤ主義の白人が乱射、11人死亡 |
2019年
8月3日 |
テキサス州エルパソのショッピングセンター「ウォルマート」で反ヒスパニック移民の白人男性による銃乱射で20人死亡、26人負傷 |
2022年
5月14日 |
ニューヨーク州バッファローで増加する有色人種が白人に取って代わるとする陰謀論(リプレイスメント・セオリー)に染まった白人男性(19)が黒人居住地域の食品スーパーを武装して襲撃、黒人10人を射殺 |
2022年
5月24日 |
テキサス州ユバルディの小学校でアサルトライフル銃「AR-15」と大容量弾倉を携行した地元高校男子生徒(18)による銃撃事件が発生、7歳から10歳の生徒19人と教員2人の計21人が殺害される |
2022年
11月19日 |
コロラド州コロラドスプリングスで男(22)が同性愛者向けナイトクラブで銃を乱射、5人が死亡、約20人が負傷 |
(資料)東京新聞(2016年6月14日、2022年11月30日)、毎日新聞(2017年10月3日)ほか |
米国人の銃保有率の推移と属性別の値は図録
8811d参照。米国では地域ごとに銃保有率が大きく異なっている。また、銃保有率の高い地域ほど自殺率も高くなっている。こうした点については図録
8811参照。米国の高校生の武器携行率については図録
8810参照。