Small Arms Surveyは、スイスのジュネーブにある国際開発研究大学院にある独立した研究プロジェクトである。このプロジェクトは、政府、政策立案者、研究者、活動家、および小型武器の問題に関する研究のためのリソースとして、小型武器と武力暴力のあらゆる側面に関する情報を提供しており、拳銃や自動小銃など小型武器の現状についての白書を毎年まとめている。ここでは2017年の報告書から拳銃など小火器の各国別の保有数を図録とした。

 世界の小火器は全部で10億1300万丁あると推計されるが、そのうち85%に当たる8億6千万丁は民間が保有している。

世界の小火器(firearm)
  小火器数
(百万丁)
比率
(%)
1,013 100.0
司法・警察当局 23 2.3
133 13.1
民間 857 84.6
(資料)Small Arms Survey ,Estimating Global CivilianHELD Firearms Numbers(2017)

 各国別に見ると米国の民間保有数が3億9千万丁と圧倒的に多く、人口比でも10人に12丁という高い保有比率になっている。まことに米国の銃社会ぶりを象徴するデータといえよう。

 小火器保有数総数で米国に次いで多いのは、インド、中国、パキスタン、ロシア、ブラジルなどである。

 人口当たりの保有数では、米国に次いで、イエメン、セルビア、カナダ、フィンランドなどが高い保有率となっている。

 ちなみに、日本の保有数は37.7万丁、人口100人当たりでは0.3丁と非常に少ない。

 アジア諸国の中ではタイの人口当たりの保有率が最も高くなっている。タイでは、簡単に取得できるライセンスさえあれば、誰でも銃を買うことができる。バンコク郊外のガンショップ経営者によれば、最新の銃を持つのが警察官のステータスだという。また「銃を持つには許可証が必要で、許可証一枚につき1丁しか所持できません。ところが銃砲店の中には一枚の許可証で何丁も警察官に売っている店がある。使わない銃を転売し、儲けている警官がいるとも聞きます」とも話している(Friday Digital「【現地レポート】銃の所持率は東南アジアでトップ ″微笑みの国″タイが抱える「銃社会」という病巣」 2023.12.16)。

 下表のように米国で銃の乱射事件がしばしば起こるのも米国の銃社会という背景によるものである。

米国で起きた主な銃撃事件
1999年
4月20日
コロラド州の高校で男子生徒2人が銃を乱射、生徒ら13人死亡(コロンバイン高校乱射事件)
2007年
4月16日
バージニア州のバージニア工科大学で男子学生が乱射、学生ら32人を殺害
2009年
11月5日
テキサス州のフォートフッド陸軍基地で陸軍少佐の精神科医師が乱射、13人死亡
2012年
7月20日
コロラド州デンバー郊外の映画館で男が乱射、12人死亡
2012年
12月14日
コネチカット州ニュータウンの小学校で男が乱射、子どもら26人が死亡
2015年
6月17日
サウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で白人の男が乱射、9人死亡
2015年
10月1日
オレゴン州ローズバーグで男が乱射、9人死亡
2015年
12月2日
カリフォルニア州の福祉施設で乱射事件。14人死亡、警察が容疑者男女を射殺
2016年
6月12日
フロリダ州の同性愛者向けナイトクラブでアフガニスタン移民の子であるイスラム教徒の男が乱射、49人死亡
2017年
10月1日
ネバダ州ラスベガスのホテル32階からコンサート会場に向けた銃乱射で、米国史上最多の死者58人の犠牲者、負傷者は527人(地元捜査当局2日発表、死者数は後日の訂正後)
2017年
11月5日
テキサス州で日曜礼拝中だった「ファースト・バプテスト教会」で黒ずくめの格好をした若い男が乱射、26人死亡
2018年
2月14日
フロリダ州パークランドの高校で19歳の男が乱射、17人死亡。高校の生徒たち自身が銃規制の強化を訴えるキャンペーン
2018年
5月18日
テキサス州サンタフェの高校でこの高校に通う男子生徒(17)が銃乱。生徒ら10人が死亡、10人が負傷
2018年
10月27日
ペンシルベニア州ピッツバーグのユダヤ教会堂(シナゴーグ)で反ユダヤ主義の白人が乱射、11人死亡
2019年
8月3日
テキサス州エルパソのショッピングセンター「ウォルマート」で反ヒスパニック移民の白人男性による銃乱射で20人死亡、26人負傷
2022年
5月14日
ニューヨーク州バッファローで増加する有色人種が白人に取って代わるとする陰謀論(リプレイスメント・セオリー)に染まった白人男性(19)が黒人居住地域の食品スーパーを武装して襲撃、黒人10人を射殺
2022年
5月24日
テキサス州ユバルディの小学校でアサルトライフル銃「AR-15」と大容量弾倉を携行した地元高校男子生徒(18)による銃撃事件が発生、7歳から10歳の生徒19人と教員2人の計21人が殺害される
2022年
11月19日
コロラド州コロラドスプリングスで男(22)が同性愛者向けナイトクラブで銃を乱射、5人が死亡、約20人が負傷
(資料)東京新聞(2016年6月14日、2022年11月30日)、毎日新聞(2017年10月3日)ほか

 米国人の銃保有率の推移と属性別の値は図録8811d参照。米国では地域ごとに銃保有率が大きく異なっている。また、銃保有率の高い地域ほど自殺率も高くなっている。こうした点については図録8811参照。米国の高校生の武器携行率については図録8810参照。

 図には保有数上位50カ国のデータを掲げているが、人口当たりの高い国の順番に対象国は以下の国々である。米国、イエメン、セルビア、カナダ、フィンランド、レバノン、オーストリア、ノルウェー、スイス、スウェーデン、パキスタン、ポルトガル、ドイツ、フランス、イラク、ヨルダン、ベネズエラ、ギリシャ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコ、タイ、オーストラリア、イタリア、メキシコ、ベルギー、アフガニスタン、ロシア、チリ、グアテマラ、アンゴラ、コロンビア、ウクライナ、南アフリカ、ブラジル、シリア、ガーナ、スペイン、アルゼンチン、イラン、スーダン、インド、モロッコ、英国、モザンビーク、エジプト、中国、フィリピン、ナイジェリア、ベトナム。

(2007年9月14日収録、2015年2月11日米国の州別の銃保有率と自殺率との相関図掲載、2016年米国の主の銃撃事件年表、2017年10月3日年表更新、2018年4月20日フロリダ高校事件年表追加、米国の州ごとの銃保有率及び自殺率との相関について図録8811として分離独立、5月20日・10月29日銃撃事件表更新、2019年8月4日・2022年11月30日銃撃事件表更新、2023年12月16日更新、タイ事情)


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