公平度の評価(公平だと思う人の割合)は、シンガポールの82%からモンゴルの18%まで差が大きい。 アジア・太平洋諸国でOECDに加盟している国のトップはニュージーランドの80%であるが、シンガポールはそれを上回っている点が目立っている。 OECD諸国の中でも日本と韓国は、それぞれ、58%、50%とそう高くない。韓国はむしろ低い水準である。 この10年間の動きをみると、おおむねどの国でも改善の方向にある点が目立っている。 なかでも、フィリピンは20%ポイント以上、インドネシア、インド、ネパール、パキスタン、アルメニアは15%以上公平度がプラスシフトしている。 公平度の動きがマイナスの国はアゼルバイジャン、香港の2カ国だけである。その中でも、香港が70%という高い水準から45%へと大きく低下しているのが目立っている。 1997年7月1日に香港の主権は中国に移ったが、当面、一国二制度が認められ、資本主義体制が維持されていた。香港の最高責任者である香港特別行政区長官は選挙委員会による間接選挙で選ばれるが、いずれ直接選挙に移行すると表明されていた。2014年8月には全人代常務委、各界代表で構成する指名委員会が候補者を選ぶ形式となり、民主派の立候補が不可能となった。これに対する抗議運動が雨傘運動として知られるようになった。そして2020年6月には香港国家安全維持法が制定され、香港の民主選挙は完全に圧殺されることになった。選挙がだんだんと中国政府の意の通りになるようにまげられているという香港人の感情をこの意識調査の結果は反映していると考えられよう。 最後に、以上から得られる選挙の信頼度と国の信頼度が相互に関連していることを示す相関図を以下に示した。 この図を見ると、全体として、選挙の信頼度が高い国ほど国の信頼度も高くなる(あるいはその逆)が成り立っている。 それとともに、アジア・太平洋諸国の中でも、OECDに加盟しているニュージーランド、オーストラリア、日本、韓国は、選挙の信頼度が高い割に国の信頼度は低い点が目立っている。民主主義が定着した国では、選挙の信頼度が高くても、それほど国の信頼度は高くならないのである。 ニュージーランド、オーストラリア、日本、韓国の4カ国を除いた相関図を描いて見れば、選挙の信頼度と国の信頼度はさらに相関度が高いことが分かろう。実際、R2を計算してみても4カ国を含んだ場合は0.539であるのに対して、含まない場合は0.822に上昇する。民主主義化の途上においてはいかに公正選挙が重要かがうかがわれる。 取り上げているアジア・太平洋諸国は21か国である。具体的にはグラフの順に、シンガポール、ニュージーランド、インドネシア、インド、マレーシア、バングラデシュ、フィリピン、オーストラリア、日本、ネパール、スリランカ、タイ、アゼルバイジャン、韓国、カザフスタン、香港、パキスタン、キルギス、アルメニア、ジョージア、モンゴル。 (2019年4月15日収録、2022年8月14日更新、相関図)
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