サービス業の地域別特化度が製造業に比べて平準化している点については図録7490参照。 サービス産業一般に似ているのは食料品である。食料品製造業は規模のメリットが小さく、また製品を運ぶコストや鮮度、製品に対する嗜好などを考えると人口に比例して分布するのが有利となっていることがうかがわれる。 一方、素材産業は茨城、富山、岐阜、山口、徳島など、輸入原材料の調達に有利な臨海工業地帯を抱える地域で就業者が多く、輸送用機械は従来より自動車産業が集積している群馬、静岡、愛知、広島、特に愛知に特化した状況が見て取れる。 また、食料品が他の2つの業種を上回っているのが、北海道、東北や九州・沖縄など遠隔地の特徴となっており、日本列島の中央部から広がった工業の発達がなお十分に及ばなかったことを示しているといえよう。なお、東北の中でも福島、九州の中でも福岡と大分では素材型産業が食料品製造業を上回るか近接しており、遠隔地の中でも工業化が進んだ地域であることが分かる。 製造業の就業者数が多かった高度成長期やその後バブル期ぐらいまでは、景気の好不況や躍進する業種のシフト(素材産業から機械産業へ、あるいは機械産業の中でも家電からエレクトロニクスなど)によって就業者数の地域別の需要はかなり大きく変動していた。そのため、人口移動の必要性も高く、地域別の失業率格差も大きかったのだといえよう。 下には、参考までに、産業中分類別の業種ごとに地域特化度がどの程度なのかを示す図を掲げた。指標としては平均からの乖離度を示す変動係数を使っている。地域特化度が最も低いのは食料品であり、木材・木製品がこれに次いでいる。逆に地域特化度が最も高いのは革製品であり、情報通信機械がこれに次いでいる。製造業全体の地域特化度が低いのは、それぞれが地域的に特化している各業種の立地が相互に重ならないようになっているからである。 (2019年5月18日収録)
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