出生場所と死亡場所の戦後の推移を図録1515で示したが、ここでは、死亡場所の最近のデータを都道府県別に掲げた。

 死亡場所の構成比の上位都道府県を調べ、結果を下表に整理した。かつては家で死亡することが多かったことから、最初は私も、古くからの慣習が残る地方圏の方が家で亡くなる人が多いだろうと考えながら都道府県別のデータを整理していたが、結果はそうではない。

死亡場所割合の上位県
順位 病院 病院以外の施設
1 東京 北海道 鳥取
2 奈良 福岡 長野
3 兵庫 高知 大分
4 神奈川 佐賀 静岡
5 大阪 鹿児島 島根
(注)病院には診療所を含む。ここで家とは、施設外の「自宅・その他」を指す。つまり、自宅のほか生母の実家、死亡者の子の家などを含む。統計区分の「その他」は老人ホーム等の病院以外施設に当たる。
(資料)厚生労働省「人口動態統計」

 家の割合が高いのは、上から、東京、奈良、兵庫、神奈川、大阪となっており、むしろ、大都市圏で、家での死亡が多い。これに対して、病院で亡くなる人が多いのは、北海道や九州・四国といった遠隔地の諸県である、また、病院以外の施設で亡くなる人が多いのは鳥取、長野、大分である。病院やその他の施設での死亡は、このように、地方圏の特徴なのである。

 理由を考えてみると、やはり、人口当たりの施設数として、病院やその他の施設が多いか少ないかが大きく影響していると思われる。つまり、死亡場所が家である割合が大都市圏で高いのは、畳の上で死にたいという望みがかなえられての結果というより、施設のキャパシティ上の余儀ない結果である側面が強いといえよう。また、大都市圏では独居老人の孤独死が多いことも影響している可能性があろう。現在の「死亡場所が家」である14.8%の者の中には、不本意なまま家で亡くなった人が、かなりの割合を占めていると考えられる。

 残された子どもに迷惑をかけないように事前準備を進めたり、臨終の方式に当人の希望を反映させようとする「終活」が人生の最期を過ごす場所の選択を含めさかんに議論されている。自宅での死については、本人の希望と家族が求める死亡直前の救命の可能性の追求とのバランスが求められるので、在宅診療や時間制約のない訪問診療が人的、制度的、コスト的に可能かが重要であろう。

(2017年5月22日収録)


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