政令指定都市の域内で少子化が進んでいるエリアをメッシュ単位であらわしたマップを掲げた。

 少子化の指標は、通常、合計特殊出生率が使われるが行政区域単位でしかそのデータは得られない。地域メッシュ単位では子ども女性比(子ども年齢0〜4歳人口/出産年齢15〜49歳女性人口)で代理できるがサンプル数の関係もあり、ここでは1995〜2020年の6時点のデータを使っている。2003年に指定されたさいたま市以降の相模原、静岡と言った新しい政令指定都市は対象外となっている。

 各政令市(政令指定都市を以下こう呼ぶ)で少子化が進んでいるエリア(黒いメッシュ地域)はおおむね都心エリアだと考えられる。単身者、未婚者、無子カップルが多いと見られるからである。逆に少子化の程度が低いのは一般の世帯が多い周辺部住宅エリアと考えられる。

 市エリアに占める少子化エリアの割合は、東京特別区がもっとも高く、大阪、名古屋といった東京以外の3大都市が次に高くなっている。

 その他では、札幌、仙台、福岡と言った地方ブロックの中心都市が次いでおり(広島はやや例外)、千葉、横浜、神戸と言った大都市周辺のベッドタウンを多く抱える政令市ではそれほど少子化エリアの割合は高くないようだ。

 各政令市の状況を分析することはできないが、ここでは、東京と京都の状況についてふれておこう。

 東京では、足立、葛飾、江戸川などの東部、板橋、練馬など北部、世田谷など西部、太田など南部の周辺地域で少子化の程度が低い地域があるが(特に東部が大きい)、それ以外の少子化エリアの面積比率が非常に大きい点が目立っている。

 東京の都心3区は千代田、中央、港の各区であるが、湾岸部を中心に案外白抜きの少子化の程度の低いエリアが多い。これは近年タワーマンションなどへの子育て家族の入居も多いからだと考えられる。

 この結果、東京の少子化エリアは都心部そのものというより、都心部から西へシフトした地域となっている。
 
 京都は地方ブロックの中心都市とは言えないが、少子化エリアがやや多い印象である。少子化エリアはほぼ「洛中」(注)と呼ばれる京都の中心部と重なっている。

(注)「京都ぎらい」という著作で知られる井上章一氏の視点を含め、一般的に「洛中」は、1591年に豊臣秀吉が築いた「御土居おどい」の内側を指す。現在の京都市上京区、中京区、下京区を中心としたエリアであり、北は北山通、南は九条通、東は鴨川、西は西大路通に囲まれた碁盤の目の地域を指すことが多い。洛外嵯峨生まれの上の井上氏は京都市以外ばかりでなく市内の「洛外」出身者でさえ「洛中」の住民から言葉や生活習慣上、正式の京都人と見なされないことを主題として上記書作を書いている(図録7773参照)。


 次に、参考までに、メッシュ単位でなく、政令市別や区別の出生率(以下、合計特殊出生率のこと)を見ておこう。

 まず、対象となっている政令市の市計の出生率(以下、合計特殊出生率のこと)の高低を見ておこう。


 東京23区(特別区)から福岡市まで、すなわち中枢拠点都市機能が集積している東京、大阪、名古屋の3大都市、および単身赴任者も多い札幌、仙台、福岡などの地方ブロック中枢都市では出生率が低くなっている。

 ただし名古屋はこの範疇であるにもかかわらず例外的に出生率が高く、それ以外と比較して定住都市的な性格もあわせもっていると考えられる。

 千葉、横浜、川崎、神戸といった大都市近郊都市(ベッドタウン都市)の機能をあわせもった政令市では出生率が比較的高くなっている。特に東京圏における東京の低さと千葉、横浜、川崎の高さは相補的と考えられる。

 メッシュ地図で見ると、東京の少子化メッシュ(黒塗りの低水準指標メッシュ)の域内割合が大きくなっており、これと対照的に千葉、横浜、川崎の少子化メッシュの割合が小さい点にこのことが反映していると言えよう。

 また市計の出生率の高い広島、北九州では少子化メッシュの割合は小さくなっている。

 京都は3大都市でも地方ブロックの中枢都市でもないが、少子化が大きく進んでいる点でやや例外的な都市である。歴史的な文化都市であり学生や単身者が多いなどの地域特性が反映しているからだと考えられる。

 2000年からの20年間の変化としては、京都、仙台、大阪で若干マイナスのほかはおおむね変化なし、あるいは上っている。

 区別の出生率については、以下に東京と京都について掲げた(その他の政令市は略)。


 東京23区(特別区)のうち出生率が最も低いには、豊島区であり、中野区、渋谷区がこれに次いでいる。

 いわゆる都心3区の千代田区、中央区、港区は比較的出生率が高く、中央区、港区に関してはむしろ出生率が東京23区の中で1位と2位の高さとなっている。人口の都心回帰が湾岸部のタワーマンションなどで進行しているためと考えられる。このため、メッシュ図の分析にも明らかだったように、出生率の低いエリアは従来型の都心というより、副都心方面にシフトしたかたちとなっているのである。

 こうした従来の都心部エリアについで、江戸川区、葛飾区、江東区、荒川区、足立区といった東部縁辺エリアで出生率が相対的に高くなっている。

 2000年には中央区、港区より足立区、葛飾区、江戸川区のほうがずっと高かったのに、2020年にかけて、前者が伸び、後者が落ち込んだため、両者は逆転している。

 京都については、祇園などの花街や清水寺など寺社の立地が特徴の東山区のほか、上京区、中京区、下京区といった洛中がの出生率が低くなっている。2000年との比較では下京区の落ち込み、北区の上昇といった変化もあるが、基本的には同じ構造である。

(2026年3月22日収録)


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