リクルートが行った調査によって全国の人気温泉のランキングを掲げた。人気度は「もう一度行ってみたいか」で測っている。

 人気度が1位なのは群馬の草津温泉であり、僅差で神奈川の箱根温泉が続いている。この2温泉が我が国温泉界の双璧とも言えよう。

 草津、箱根に続いて、北海道の登別温泉、愛媛の道後温泉、大分の別府温泉の人気が高くなっている。

 全国集計の結果とともに各地方ブロックごとの集計結果を掲げておいた。各地方居住者に人気の温泉地は、やはり同一地域に存在する温泉であることが分かる。

 東北では宮城の秋保温泉、東海では岐阜の下呂温泉、北陸・関西では城崎温泉、九州・沖縄では熊本の黒川温泉が人気度トップの温泉地となっている。

 草津、箱根の人気度が高く人口が多い関東・甲信越で人気度トップ2だからであり、他地方の住民がもう一度行きたいと回答している割合が多いわけではない。温泉はいくらいい温泉であってもそう遠くまで出かけるような性質のものではないようだ。

 そうした意味からは、北海道の登別温泉は、北海道で首位であるほか、関東・甲信越の住民や北陸・関西の住民も5番目に挙げており、全国的に人気がある温泉としては登別温泉の方が首位かも知れない。

 また、兵庫の有馬温泉も、北陸・関西では人気度2位であるが、東海で5位、中国・四国で3位と広域的な人気を誇っている。

 日本三名泉、日本三古泉という言い方があり、古来より温泉地ランキングは国民の関心を集めていた。

 「日本三名泉」と呼ばれているのは、「有馬温泉(兵庫)」「草津温泉(群馬)」「下呂温泉(岐阜)」の3つの温泉である。そう呼ばれるようになった由来は室町時代に遡る。始めに記されたのは室町時代の京都五山相国寺の詩僧・万里集九の詩文集『梅花無尽蔵』。さらに江戸時代になって、その書に3つの温泉について記されていたことを徳川家康に仕えた儒学者の林羅山が詩文集の中で「天下の三名泉」と記述したことに由来しているそうである。

 また、「日本三古泉」とは「古泉」と呼ばれるにふさわしい歴史ある温泉のことである。「日本三古湯」と呼ばれることもある。

 実はこの「日本三古泉(三古湯)」、3つの温泉について“2つの説”があると言われている。まず1つ目の説は、「道後温泉(愛媛)」「有馬温泉(兵庫)」「白浜温泉(和歌山)」の3つの温泉。『日本書紀』や『風土記』に登場することで呼ばれるようになった。もう1つの説は平安時代の『延喜式神名帳』の記されている「道後温泉」「有馬温泉」「いわき湯本温泉(福島)」の3つの温泉のことである。

 図録5407には以下のような創業年の老舗温泉旅館を掲げたので参照されたい。

705年 西山温泉 慶雲館(山梨)
717年 城崎温泉 古まん(兵庫)
718年 粟津温泉 善吾楼(石川)
1184年 秋保温泉 ホテル佐勘(宮城)
1191年 有馬温泉 御所坊(兵庫)
1190年 山中温泉 白鷺湯たわらや(石川)

 参考のため、「ねとらぼ」サイトなどによる各温泉の紹介文章を以下に掲げてみる。
登別温泉
登別温泉は北海道を代表する温泉で、温泉街はさほど大きくないが、豊富な湧出量で9種類の泉質に分かれ「温泉のデパート」と呼ばれているのが特徴。リウマチや冷え性など、さまざまな症状に効用があるといわれている。「地獄谷」は日和山の噴火によって生じた爆裂火口跡で、登別温泉の中心的な観光名所になっている。ザ・ドリフターズの「いい湯だな」の出だしとなる温泉地で、火山に囲まれた、壮大な景観も魅力となっている。日本一丸いとされる倶多楽湖を眺められる山頂までロープウェーが通じており、そこまで行って悪天候で景観を楽しめないときのためにクマ牧場が作られている。
定山渓温泉
約150年前に僧侶の美泉定山(みいずみ・じょうざん)によって湯治場として拓かれ、彼の名が付けられた定山渓温泉。札幌の市街地からほど近く、良質な温泉が湧いていることで「札幌の奥座敷」と呼ばれてきた。温泉街の中心部を流れる豊平川の脇には「定山源泉公園」がある。美泉定山生誕200年の2005年(平成17年)に整備された公園で、ここで定山は温泉を見つけたという。定山の銅像があり、広い足湯もある。
鬼怒川温泉
鬼怒川温泉は、栃木県の鬼怒川渓谷にある江戸時代に開湯した由緒正しき温泉地。雄大な渓谷沿いには、旅館やホテルが軒を連ね、自然を眺めながら温泉を楽しむことができ、ロープウェイや鬼怒川のライン下りなど、渓谷ならではのアクティビティ体験もおすすめ。 また少し足を伸ばすと、世界遺産でもある「日光東照宮」や日本三名瀑の一つ「華厳の滝」などの人気観光地スポットにもアクセスできる。冬らしい景色を楽しみたい方にぴったりな温泉地といえる。
草津温泉
草津温泉は、草津白根山の東側のふもとにあり、自然湧出量が日本一の温泉である。温泉街には硫黄の香りが漂っている。室町時代から「三名泉」に選ばれた記録がある「日本三名泉」の一つで、古くから湯治場として使われてきた。草津温泉の中心には、湯けむりを舞い上げている「湯畑」が広がり、源泉の温度が高く、「湯もみ」の体験などを楽しむことができる。温泉街は湯畑を中心として観光スポットが点在しており、観光客で賑わう。街はコンパクトなので、名物の温泉饅頭を楽しみながら、徒歩で観光できる。夜は湯畑のライトアップも楽しめる。
箱根温泉
日本でも指折りの温泉地として知られている箱根温泉は、古くから親しまれており、江戸時代には「箱根七湯」として人気を集めていた。都心からもほど近く、小田原から箱根登山鉄道に乗って行くことができるため。日帰りでも温泉を堪能できる。様々な泉質の17の温泉は「箱根十七湯」と呼ばれ、山のいたるところから湧き出るため、さまざまな宿で温泉が楽しめる。 箱根の中心でもある「箱根湯本」には、温泉街が広がり、食べ歩きやお土産探しなどの散策スポットとしても最適。 箱根は、芦ノ湖や箱根神社、大涌谷、箱根強羅公園など温泉街以外にもさまざまな観光地が点在している。美術館などもあるので、自分に合った楽しみ方が見つけやすいスポットと言えよう。
有馬温泉
有馬温泉は「日本三古湯」の一つに数えられる温泉。室町時代には三名泉とされ、江戸時代には「天下の三名泉」として親しまれてきた。湯泉神社にまつられる神様たちが、温泉の効能で傷を癒やしていく “三羽のカラス” を発見し、有馬の温泉が誕生したと伝えられている。最も歴史の古い温泉の一つといわれる有馬温泉は、豊臣秀吉など多くの歴史上の偉人たちも愛していたといわれており、秀吉の石像や、秀吉の敬称 “太閤” にちなんで名付けられた『太閤橋』、豊臣家の家紋で日本政府の紋章として使われている『五七桐』もある。六甲山の麓にあり、紅葉の名所としても有名。大阪や京都方面からもアクセスしやすく、気軽に非日常を堪能できる。金の湯・銀の湯と呼ばれる2種類の温泉があり、それぞれ比べてみれる。名物の「炭酸せんべい」などを食べながら街を散策する人も見られる。
 有馬温泉は「謎の温泉」と呼ばれる。周辺に火山がないのに90度以上の熱いお湯が湧き出すからである。一般には地下のマグマが高温の湯を生むのであり、火山のない地域では、地下水が地熱で温まっても40〜50度が限界という。最近、お湯に含まれる同位元素の研究から有馬の湯は地下水起源ではなく、太平洋の水がプレートによって運ばれたということが分かった。太平洋プレートに比べ沈み込みが早い有馬温泉の地下のフィリピン海プレートは温度が高く、水を含んだ鉱物から放出されるスラブ水が浅い場所で350度以上になり、東北のように冷えた状態からマグマ水に温められる経過を経ず、それが直接地表に達していると考えられるようになった(東京新聞「科学シルマナブ」2024.5.26)。
城崎温泉
城崎温泉の歴史は古く、開湯は飛鳥時代とも奈良時代ともいわれている。城崎温泉にある温泉寺は、738年に建立された歴史のある寺である。温泉街に外湯は7カ所あり、温泉めぐりを楽しめる。温泉街の中心を流れる大谿川(おおたにがわ)沿いに柳並木が広がり、情緒あふれる光景を楽しめる。歴史のあるノスタルジックな宿が点在しているのも魅力。
下呂温泉
草津温泉、有馬温泉と並び日本三名湯に数えられる下呂温泉。古来より「三名泉」の一つに数えられており、平安時代には開湯していたと言われている。下呂駅から飛騨川沿いを中心に、旅館やホテルが林立しており、温泉街が形成されている。温泉街には外湯や噴泉池、足湯が数多くある。無色透明の肌に優しい単純温泉で、一般的な温泉より刺激が少なく湯あたりしにくいともいわれているため、子どもやシニアも安心して楽しむことができる。下呂温泉を心ゆくまで満喫するなら「湯めぐり手形」を購入するのがおすすめです。1枚1300円で約23軒もの手形加盟旅館から3軒のお風呂に入浴できる。
伊東温泉・宇佐美温泉
別府、熱海とともに国際観光温泉文化都市に指定されている静岡県伊東市は、伊東駅からすぐにアクセスできる伊東温泉、伊東市北部の宇佐美海岸沿いに位置する宇佐美温泉を有している。伊東温泉は、木造建築や石畳や桜並木の遊歩道など、昭和レトロな雰囲気。泉質は冷え性に良いといわれる塩化物泉となっている。海水浴やサーフィンなどマリンレジャーを楽しむこともできる宇佐美温泉も同質で“温まりの湯”として人気であり、夏も冬も楽しめる温泉地だ。
奥飛騨温泉郷
北アルプスの山々を見渡しながら温泉に浸かることができる奥飛騨温泉郷。「白銀の世界を眺めながらの開放感ある露天風呂は奥飛騨ならでは! 冬の風情を味わうなら一番」というコメントもあり、ダイナミックな景色と一緒に温泉を楽しむことができる。奥飛騨温泉郷には平湯温泉・福地温泉・新平湯温泉・栃尾温泉・新穂高温泉という5つの秘湯があり、露天風呂から貸切風呂まで温泉地が点在。武田信玄が発見したといわれる天下の名泉「平湯温泉」や奥飛騨の原生林にある16の露天風呂に浸かることのできる「ひらゆの森」など、一度は訪れてみたい温泉ばかりである。
白浜温泉
『日本書紀』や『万葉集』に登場し、歴代の天皇も訪れていたとされている。温泉地は、白くて美しい砂浜で海水浴場としても人気の高い「白良浜」が中心。波打ち際に近い露天風呂や、水着のまま入れる露天風呂などさまざまな日帰り湯が点在している。足湯スポットも豊富。周辺には、「アドベンチャーワールド」があるのも魅力。動物園・水族館から遊園地まであり、子どもも大人も楽しめる観光地。グルメは、旬の魚介類やご当地スイーツを堪能できる。
別府温泉
別府市にある別府温泉は、湧出量・源泉数は日本一を誇り、数百にのぼるさまざまな泉質の温泉を楽しめる。別府の温泉地帯は「浜脇温泉」「別府温泉」「亀川温泉」「観海寺温泉」「堀田温泉」「明礬温泉」「鉄輪温泉」「柴石温泉」の8つのエリアにわかれていて、「別府八湯」と呼ばれている。この八湯にはそれぞれ泉質などに違いがあり、異なる歴史と豊かな個性で、温泉ファンを魅了してやまない。国指定名勝の「海地獄」や「血の池地獄」など7つの源泉をまわる「別府地獄めぐり」も人気。周辺には、ライトアップされた湯けむりを楽しめる「湯けむり展望台」や、美しい景色を堪能できる「別府ロープウェイ」などの観光地が充実している。また、漫画『鬼滅の刃』の聖地として「八幡竈門神社」も話題。「志高湖」や「城島高原」といった屋外レジャーを楽しめるスポットまである。
道後温泉
松山市に位置し、日本三古湯の1つとして知られている。3000年の歴史を誇り、『万葉集』や夏目漱石の『坊つちやん』にも登場。本館が映画「千と千尋の神隠し」の湯屋のモデルの1つといわれている。1人で訪れてもじっくり楽しめるエリア。

(2022年8月7日収録、10月29日登別温泉コメント補強、2024年5月27日「謎の」有馬温泉)


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