データを掲げた67か国中、家計通信費の対GDPが最も高いのはセネガルの5.45%であり、マレーシアとモンテネグロが4.51%で続いている。 OECD諸国の中では、ギリシャが3.18%で最も高く、チリ、トルコ、日本が2%台でこれに続いている。 日本以外の主要先進国は、高いカナダ、ドイツ、米国がそれぞれ1.46%、1.42%、1.41%であり、低い英国、フランスはそれぞれ1.21%、1.31%であり、おおむね、1%台前半の水準に収まっている。これと比べ日本は2.01%と大きくかけ離れて高い点が目立っている。 世界全体の家計通信費の分布は、途上国の方が先進国より概して高い点、途上国にせよ先進国にせよ国ごとのばらつきが大きい点が特徴としてあげられよう。 通信費が世界2位であるマレーシアにおける携帯中毒は日本以上に深刻であるようだ。食事の際の家族との対話が阻害されるのを防止するため、政府機関の人口・家族開発局が首都圏の飲食店と連携して「ノー携帯運動」を始めたという。これは、食事の間、携帯に触れずにいられたら、客に特別サービスをするというものであり、ある日本の新聞社の特派員は、クアラルンプールで、これに乗ってバニラアイスを褒美でもらったが、食事中、メールの着信音が気になってアイスの後味が悪かったと報告している(朝日新聞2016.6.2)。マレーシアでは携帯電話の普及率が1人1.34台とかなり高いので(図録6360)、これと関係がありそうである。個人用と仕事用と2台使用していて両方個人の家計負担になっているのではなかろうかとも想像されるが、詳細は不明である。 家計通信費の対GDPは、携帯電話・スマホの普及率、使用頻度(時間)、通信料金、及び母数となる消費支出額の水準(生活程度)がすべて関係してくるので、単純に通信料金が高いわけではない。おそらく、途上国では家計支出金額がそう多くないのに、通信代には先進国に近い金額を支出しているので通信費対GDPが高くなっているのだと考えられる。 通信料金が高いか安いかを判断するためには、同じ通信量(使用時間や情報バイト数)当たりの通信料で比較するのが常道であるし、実際、総務省の情報通信白書などでは、そうした比較が行われている。そして日本の通信料はガラ携は安く、スマートフォンはやや高いという結論になっている(平成27年版p.386)。これは公平なようで公平でない評価方法である。というのも通信量当たりの通信料が「公平な」評価方法では安くても、利用度の低い高齢者から高い基本料金を得ていたり、あるいは不必要な通信を使用者に誘発させて多くの通信費を支出させたりして通信会社が利益を得ているとしたら、やはり、通信費は高いと言わざるを得ないからである。家計の通信費対GDP比では、そんなところまで含めたトータルなデータとして、やはり重要なのだと思われる。 参考までに以上の国々のうち63カ国について所得水準との相関を掲げると下図の通りである。所得水準の高い国では通信費対GDPが小さくなる傾向が認められるが、低所得国の中には非常に通信費が高い国もあれば低い国もあるという特徴もある。日本は1人当り4万ドル以上の国の中では通信費が高めになっていることが分かる。。 最初の図に掲げた67カ国をOECDと非OECDの別に通信費対GDPの大きい順に列挙すると次の通りである。ギリシャ、チリ、トルコ、日本、ラトビア、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、リトアニア、ポルトガル、スペイン、メキシコ、ニュージーランド、イスラエル、カナダ、ドイツ、韓国、米国、イタリア、ポーランド、オランダ、スウェーデン、チェコ、フランス、エストニア、英国、フィンランド、オーストラリア、ベルギー、アイスランド、オーストリア、デンマーク、ノルウェー、アイルランド、ルクセンブルク、セネガル、マレーシア、モンテネグロ、アゼルバイジャン、セルビア、ブラジル、ブルガリア、ホンジュラス、ケニア、コスタリカ、ベラルーシ、コロンビア、キプロス、バミューダ、モンゴル、フィリピン、エスワティニ、ザンビア、マルタ、ウクライナ、南アフリカ、ニジェール、ロシア、グリーンランド、インド、タイ、エチオピア、アンドラ、シンガポール、マカオ、スリランカ、ブータン。 (2015年10月6日収録、2016年5月4日その2更新、通信費割合の推移追加、5月8日その2チェコ、アゼルバイジャン追加、5月10日その2モンゴル、ギリシャ、イスラエル、カメルーン、ブータン追加、6月2日マレーシアの携帯事情、2017年2月22日更新、ただし家計に占める割合から対GDPに指標を変更、OECDと国連のデータを統合、相関図追加、冒頭部分を図録6366へ移動、2018年4月9日63カ国相関図国名表示追加、2019年1月19日更新)
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