英国のEU離脱(Brexit、ブレグジット)がいかに大変な道のりかを示すデータを掲げよう。

 イノベーションに民間企業が取り組んでいる程度をあらわす指標のひとつとして企業のR&D(研究開発)の対GDP比がある。少しデータは古いが、OECD諸国についてのこの指標とその内訳として外資系企業が占める割合をあらわしたグラフを示した。

 企業のR&Dの対GDP比(2013年)の上位5位は、高い順にイスラエル、韓国、日本、スウェーデン、フィンランドであり、日本企業の研究開発への取り組みは活発であるといってよい(それがどれだけの成果を生んでいるかはまた別の話だが)。

 G7諸国の順位は日本に続いて、米国、ドイツ、フランス、英国、カナダ、イタリアの順となっている。

 企業のR&Dに占める外資系企業の割合を見るとグローバリゼーションの進展の中で、全体として、高くなっている状況が見て取れる。

 その中で、日本や韓国は1割以下と低い点が目立っている。米国も16.4%とそう高くない。

 逆に、ベルギーやアイルランド、イスラエル、チェコ、英国などは企業のR&Dに占める外資系企業の割合が高い点が目立っている。こうした国では、民間企業の活力が外資系企業によって支えられている側面が大きいといえよう。

 以下には、OECD諸国全体、および英国で、企業のR&Dに占める外資系企業の割合がどう推移しているかを示すグラフを掲げた。その割合はだんだんと上昇しつつあり、グローバリゼーションの中で資本の相互流動が高まり、今や、外資系企業なしでは各国の民間経済の活性を維持することは難しくなっていることを示している。特に英国の場合は企業のR&Dに占める外資系企業の割合が5割を上回る状況になっており、外資系企業なしでは経済の発展が見通せないところまで来ているといえよう。


 英国のEU離脱(Brexit、ブレグジット)は移民労働によるマイナスなどを嫌って国民が選択するに至った状況であるが、英国から外資系企業が引き上げる事態となったら、英国経済の先行きは一体どうなるのであろうか?

 19年7月下旬には保守党のボリス・ジョンソン氏(55)が合意なき離脱も辞さないという主張で新首相に就任したが、ドイツの代表的週刊誌は表紙で有名な風刺雑誌MAD誌になぞらえて新首相を以下のように戯画化した。ヨーロッパの他国からすれば、このように見えるのは無理からぬところなのではなかろうか。


(2019年7月30日収録、8月2日MAD誌を装ったDER SPIEGEL誌、2024年6月7日ベター・コール・ソウル画像図録5664から再録)


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